報道によると9月7日に民進党の代表選挙が行われるようです(未確定のようですが)。岡田代表の続投になるのか、新代表になるのか、私にはわかりません。
ただ、誰が代表になったとしてもお願いしたいことが2つあります。ひとつは「ビジョンの明確化」、もうひとつは「新しい支持基盤固め」です。
1.党としてのビジョンの明確化と共有化
政権政党にとっては「どんな社会をめざすのか」というビジョンが大切です。民進党の綱領は「自由」「共生」「未来への責任」を軸としたものですが、めざす社会像やビジョンはあまり知られていません。参議院選挙の公約を見ても、ビジョンが具体的にイメージしにくいため、政策のメッセージ性が弱く、魅力に乏しいように感じました。
ある政治学者は「民主党の2009年総選挙マニフェストは、政策を貫く明確な共通の理念が存在せず、めざす社会のビジョンを示すにはいたらなかった」と総括しています。そのことも民主党政権の失敗の原因でした。共通の理念がないため、議論が百出して「党内がバラバラ」という印象を与えました。野党時代にマニフェストの中身をきちんと議論して党内コンセンサスをつくっていなかったことが、政権獲得後のゴタゴタを招きました。
民進党は次の国政選挙に向けてマニフェスト(政権公約)のつくり方を改革しなくてはいけません。党内外の意見をよく聴いて、共通の理念を明確化・共有化することからスタートすべきです。その上でシンクタンクや学者などの専門的助言を受けながら、時間をかけて議論をして政策を練り上げていくプロセスが大事です。党内で十分に議論してつくられたマニフェストであれば、それに反対することは難しいです。野党時代に丁寧に議論してビジョンや共通の理念についてのコンセンサスをつくり、党としての一体感を醸成することが大切です。コンセンサスに基づくマニフェストが、党内の求心力の維持と政策的一貫性の担保につながります。
民進党は、格差の少ない社会、子育てや介護を社会全体で担う安心社会、多様な価値観を認める寛容な社会をめざしています。そのビジョンを党内で共有し、それに沿った政策を用意して政権をめざすべきだと思います。
2.新しい支持層の拡大と固定化
その時々の「風」頼みの政党には、政治の流れを大きく変えることはできません。一時的なブームに乗り、できては消えた新党がたくさんありました。政治の流れを大きく変えるためには、政権を獲得してそれを維持する力のある政党が必要です。民進党が政権政党に成長するためには、組織づくりと支持層の拡大・固定化が必要です。業界団体や地縁に頼った自民党に対抗するためには、新たな支持層の開拓のために明確な政策的メッセージを発信する必要があります。
参考にすべきはアメリカ民主党のルーズベルト大統領の「ニューディール連合」です。1930年代のアメリカの少数派(弱者)は、都市住民、移民、黒人、宗教的少数派、労働組合でした。この少数派グループを支持基盤としてルーズベルトは長期政権を維持しました。
今の日本では安倍政権が「強者の政治」を進めています。富裕層や輸出大企業といった一部の人たちがより豊かになり、多くの庶民の暮らしは上向かず、格差が拡大しています。今の日本で「少数派(弱者)」といえるのは、女性、低所得者、年金生活者、非正規雇用、中小零細企業の従業員、不況しか知らない若者、子育て中の若い世帯、シングルマザー等の「標準世帯」でない世帯、東日本大震災や熊本地震の被災者、貿易自由化で影響を受ける農家などがあげられます。人は、誰でも一生の間に弱者になり得る存在です。いまは若くて健康で安定した職に就いている人でも、病気やケガ、失業や被災、加齢をきっかけに弱者になる可能性が十分にあります。長生きすれば、誰だって体が弱って弱者になります。
弱い立場の人たちを支える政党をめざすことが、民進党の支持基盤固めにつながります。民進党は、分厚い中間層を再生して「ふつうの人」から豊かになる経済政策、弱い立場の人たちに寄り添う政治をめざす、いわば「日本版ニューディール連合」をつくるべきだと思います。「日本版ニューディール連合」が、安倍政権への対立軸を明確化し、政権の受け皿になります。その上で民進党は、子どもの貧困、非正規雇用の問題、女性が働きやすい環境整備、介護士や保育士の待遇改善、公教育の強化、大学の授業料の減額などに取り組む姿勢を強く打ち出すべきです。