国民民主党との合流交渉:山口二郎氏コメント

政治学者の山口二郎教授が、週刊東洋経済「フォーカス政治」(2020年8月1日号)に次のように書かれていました。

緊張感のある選挙のためには、政権の選択肢が不可欠であり、その構築に向けた模索が続いている。連合は立憲民主党と国民民主党の協力強化を呼びかけ、立憲の枝野幸男代表が国民民主党に合流のための道筋を提案している。しかし、国民民主党の玉木雄一郎代表は消費税減税やベーシックインカムなどの奇抜な政策を唱え、合流の行方は見通せない。

山口先生は「消費税減税やベーシックインカム」のことを「奇抜な政策」とまで呼んでいますが、立憲民主党の党内ではどちらも賛否両論の政策です。合流交渉の場で、「奇抜な政策」を受け入れろ、と迫られても困ります。

今の日本に必要なのは、疾病や災害などさまざまなリスクに対処する拠り所としての有能な政府である。その点で、玉木氏が言う時限付きの消費税率引き下げは悪手である。一度下げた税率を再び上げる力を持つ政権は、当分日本には現れない。日本銀行引き受けで国債を出し続けるという実験に国民を巻き込むことは絶対に許されないので、減税は福祉サービスや地方財源の削減にシワ寄せされる。

おそらく「時限付き消費税減税」は、発表された瞬間に買い控えを引き起こすでしょう。政策決定から減税実施までのタイムラグがあり、その間は消費が減少します。タイムラグが数か月あるとすれば、その間の景気は悪化します。

そして減税が時限付きなので、減税期間中に耐久消費財や自動車、住宅、別荘などの高額な買い物をする人が大勢いるでしょう。しかし、お金に余裕がある人しか、高額の買い物はできません。年金生活のお年寄りやひとり親世帯は、減税になっても高額の買い物をする余裕はないでしょう。

しかも、減税期間が終わった後には、長期にわたる買い控えが起こるでしょう。時限付きの消費税減税は、需要の凸凹をつくり、消費税負担を免れたお金持ちが得をする、という結果に終わるでしょう。時限付きの消費税減税により、お金持ちへの所得再分配が進むことでしょう。

消費税減税は、(1)税収減による借金増、または、(2)社会保障費等の公共支出削減につながるでしょう。どちらにしても望ましい帰結ではありません。時限付きの消費税減税よりは、いま困っている人への直接給付の方が効率的だと私は思います。

以上述べてきたとおり「時限付きの消費税減税」はリスクが高いです。そんな政策が合流の条件なら、合流しなくてもよいと私は思います。「奇抜な政策」を合流の前提とすべきではありません。