蓮舫代表が辞任し、9月にも新しい代表が誕生することになりました。崖っぷちの民進党をたて直し、国民の信頼を回復するために、新しい代表が取りくむべき課題は多いです。民進党が自民党に代わる受け皿として認識されるために、やるべきことを思いつくままに列挙してみました。
1.党としての立ち位置の明確化
東京都議選では「都民ファーストの会」が躍進しましたが、小池知事が選挙直前まで自民党を離党しなかったことを見ても明らかなように、基本政策は自民党とそんなに変わりません。都民ファーストの選挙公約を見ると、情報公開とか、議会改革とか、歳出改革とか、どの党でも言いそうな一般的な公約が多く、自民党との政策的なちがいはあまり明確ではありません。
政策にちがいがないとすれば、印象のちがいが明暗を分けたと言えます。自民党守旧派の「自民党Aチーム」に対して、都民ファーストという新パッケージのもとで小池知事の人気にあやかった「自民党Bチーム」が圧勝したようなものです。都民ファーストが国政に進出しても、「自民党Bチーム」程度の政策的な差異しかないので、政治理念や政策体系において自民党に対抗する軸にはなり得ません。
民進党は、自民党に代わる選択肢を示すため、自民党とのちがいを明確化し、自民党モデルに代わる社会モデルを提示しなくてはいけません。民進党は、現実的かつ前向きな解決策をパッケージで提案する義務があります。代表選を通じて各候補者が持論を展開し、党のビジョンや方針を明確化していく必要があります。
2.日本版ニューディール連合:少数派連合で多数派を形成
1930年代、米国のルーズベルト大統領は、都市住民、移民、黒人、宗教的少数派(カトリック等)、労働組合等の当時のマイノリティ(少数派、弱い立場の人たち)の支持を固めて「ニューディール連合」を形成し、長期政権を維持しました。「ニューディール連合」のマジックは、「少数派でもひとつひとつ足し合わせていくと最終的に多数派を形成できる」という点です。
安倍政治は「強者の政治」です。アベノミクスは格差拡大や非正規雇用の増大を招きました。いま日本で「弱い立場の人たち(少数派)」といえば、非正規労働者、低所得者、中小零細企業、年金生活者、女性、子ども、障がい者、LGBT、過疎地住民、東日本大震災や集中豪雨の被災者等です。弱い立場の人たちの声を代弁し、その権利や生活を守る政策を前面に打ち出すべきです。
*ご参考:2016年2月29日付けブログ「少数派連合で政権を目指す」
3.マニフェスト作成過程の改革:ビジョン重視とオープン化
マニフェスト(政権構想)の改善が不可欠です。これまでのマニフェストのあり方や作り方を反省する必要があります。ある政治学者は「民主党の2009年総選挙マニフェストは、政策を貫く明確な共通の理念が存在せず、めざす社会のビジョンを示すにはいたらなかった」と評しました。ビジョンを示せなかった2009年マニフェストは失敗作です。さらに2009年マニフェストは実現可能性にも問題がありました。次のマニフェストでは、同じ失敗は許されません。
今年6月のイギリス総選挙の労働党マニフェストは、格差是正のための再分配強化や公的サービス充実を訴える内容で高く評価され、労働党の躍進に貢献しました。労働党は、党内外の専門家や市民団体の意見をよく聴き、党内コンセンサスを形成しながら、時間をかけてマニフェストをつくります。コンセンサスを重視するので、党内のゴタゴタも起きにくくなります。めざす社会像を示すビジョン重視型マニフェストを丁寧につくる必要があります。
*ご参考:2016年6月14日付けブログ「マニフェストの反省とその次へ」
4.民進党シンクタンクの創設:政策の質と信頼性を高める道具
政党の売り物は政策です。しっかりした政策を立案し、良いマニフェストをつくるには、専門家の助言や体系的な調査研究が不可欠です。自民党は政策面で霞が関の役所に全面的に依存していますが、民進党は役所に全面依存すべきではありません。官僚的な発想だけでは社会の変化に対応できないため、民間のシンクタンクの活用も重要です。しかし、日本ではアメリカのように民間シンクタンクが発達していないので、党営シンクタンクを創設すべきです。民主党時代には「プラトン」というシンクタンクがありましたが、残念ながら小沢一郎幹事長が廃止しました。民進党シンクタンクを創設して、政策の質で自民党と正々堂々と勝負すべきです。
*ご参考:2016年7月14日付けブログ「民進党シンクタンクを創ろう」
5.市民団体や専門家団体等との対話強化:市民参加型の政治へ
民進党が重視する分野(医療、介護、教育、子育て、障がい者支援等)のNPOや専門家、学者等との政策対話と連携を強化すべきです。市民団体との連携も重要です。霞が関に頼らず、さまざまな分野の専門家や市民に民進党の政策立案に関わってもらうことが重要です。
*ご参考:2016年7月12日付けブログ「リベラル懇話会という試み」