「衆議院議員になってよかった」と思うとき

カジノ汚職、河井前法務大臣の選挙違反、与党議員の銀座クラブ通いなど、衆議院議員のイメージは最悪です。多くの人から「衆議院議員なんてロクな人間じゃない」と思われています。

ドラマや小説に出てくる悪い政治家は、たいてい「悪徳代議士」です。言うまでもありませんが、「代議士」とは衆議院議員を指します。悪い政治家の代名詞が「代議士」である衆議院議員です。

世界68か国の5万人を対象にした調査によると「政治家を信用する」と答えた人はわずか13%だそうです。英国の政治学者のジェリー・ストーカー氏は「政治家は権力に飢えた嘘つきだという見方は我々の時代の常識である」と言います。政治家が信用されていないのは世界共通です。

しかし、なかには仕事ぶりを評価してくださる人もいて、「衆議院議員になってよかった」と思う瞬間もたまにあります。

あるNPOから要請を受け、今年2月10日付で内閣に対して「質問主意書」を出しました。それに対して2月24日に内閣の答弁書(内閣衆質204第42号)が届きました。その質問主意書と答弁書を読んだ方が、ツイッターで次のようにつぶやいてくださいました。

本当に弱い人の声を拾って関心を持ってくださる議員さんがいてありがたくて涙がでました。

見知らぬ方から「ありがたくて涙がでました」などと言っていただけると、国会議員冥利に尽きるというものです。

ツイッターでつぶやいてくださった方(匿名)とはおそらく面識はないのですが、日本のどこかで困っている人のお役に立てたことが実感できてうれしいです。

どんな案件かというと、離婚した元夫婦のお子さんとの面会交流の制限に関する質問でした。一般的には面会交流は必要な措置です。しかし、DVや虐待で配偶者と離婚して子どもと暮らしている配偶者(多くの場合、女性)や子どもが、面会交流によって元配偶者の攻撃にさらされたり、新たな暴力の被害に遭う事例が過去にありました。

たとえ血のつながった親でもDVや虐待の加害者であった場合は、子どもとの面会交流の強制は危険です。子どもの心に悪影響を与え、PTSD症状やフラッシュバックといった心身の支障につながる可能性もがあります。

たとえば、2017年1月には長崎県諫早市で子どもを面会に連れてきた母親を、元配偶者の父親が殺害し、自分も自殺するというショッキングな事件がありました。この事件は「長崎面会交流殺人事件」と呼ばれています。同年4月には大阪府伊丹市で、面会交流中に父親が4歳の子どもを殺して、本人も自殺するという痛ましい事件が起きました。

こうした事例を考えると、虐待を行った元配偶者との面会交流には慎重な判断が求められます。子どもが嫌がっているケース、DVや虐待が原因で離婚したケースなどでは、面会交流を強制しないような配慮と法的保護が必要だと思います。そういった趣旨で質問主意書を提出しました。

この質問主意書に対する政府答弁書に以下の文言がありました。

面会交流は、父母間で協議が調うか、裁判所がその実施を命じた場合に実施すべきものであり、父母の一方が子との面会交流を希望していたとしても、それだけで実施すべきことにはならない。

この文言がやや強引に面会交流を実施させるケースへの抑止力になるそうです。恥ずかしながら私自身は、この答弁書の当該部分がそれほど重要だと気づきませんでした。当たり前すぎて重要性を見過ごしていました。しかし、当事者団体や被害者救済にあたる弁護士さんにとっては重要な政府答弁だそうです。

前述のツイッターを投稿した方は、その点を評価してくださって「ありがたくて涙がでました」と書いてくださった様子です。

しかも、そのツイッターを見た立憲民主党の小選挙区支部長(=次の衆院選の立候補予定者)が、「私もそんな議員になるためにがんばります。」と投稿していました。私の議員活動を目標にしてくれる新人候補者がいて、それもちょっとうれしかったです。

また質問主意書の作成をサポートして下さった衆議院法務調査室のスタッフや答弁書を書いた法務省の担当者にもこの場を借りてお礼申し上げます。皆さんのご協力のおかげで助かっている人が日本のどこかにいるようです。