今朝の西日本新聞(2月24日)の一面記事「18歳の命 家族がつなぐ」を読んで感動しました。2010年の臓器移植法改正のときの議員提出法案の提出者であり、超党派の臓器移植法改正議員連盟の事務局長をやっていた私にとっては「法改正してよかった」と感じさせてくれる記事でした。
記事のストーリーは、鹿児島県の5人兄弟の18歳の四男が交通事故にあって脳死状態になり、本人の意思を記したドナーカードはなかったものの、家族会議で臓器提供を決めて、心臓他の臓器が6人に移植されたというものです。
医師から四男の脳死を宣告されて、臓器提供の意思を尋ねられ、家族会議を開いたときに、兄弟は一致した臓器提供を望んだそうです。記事に出てくるご兄弟のコメントです。
あいつの性格からして『臓器が欲しい人にあげたい』と絶対言うよ(長男)
お母さん、灰になったら何にもなくなってしまうよ(長女)
たまたまテレビで臓器移植をとりあげた番組を見ていた時に四男が「助けた方がいいだろ。自分なら絶対提供するよ」と言ったのをご両親が覚えておられました。そのこともあってご両親も納得し、臓器提供することになったそうです。
1人のドナーからは心臓、肝臓、腎臓等の臓器提供が可能になるため、一度に何人かの患者さんの命を救うことになります。鹿児島のこの例では6人の命が助かりました。6人の中には余命1か月を宣告されていた人もいたそうです。
臓器移植という治療法は劇的な効果があります。余命1か月の人がすっかり治り、スポーツもできるし、職場復帰もできるし、というケースが大半です。悪い部分を治療するのではなく、悪い部分をそのまま取り換えてしまうイメージに近いと思います。臓器提供を受けた人の多くは、健康に長生きされることが多いです。
国会議員でいえば、2010年の臓器移植法改正のときに熱心に法改正を推進していたのは、河野洋平衆院議長と河野太郎衆議院議員(現外相)でした。河野洋平先生が肝臓を悪くされて命があぶなかったときに、河野太郎さんが生体肝移植で肝臓を提供しました。そのおかげで河野洋平先生は一命をとりとめ、いまでもお元気です。
しかし、本来、生体肝移植というのは望ましい治療法ではありません。健康な身体の人にメスを入れる治療法は健全ではありません。ドナーの側にも健康リスクがあります。また発展途上国ではお金目当ての生体肝移植もあり、問題になっています。
iPS細胞等の治療技術が発達し、臓器移植に頼らない治療法ができれば、それがベストです。移植医療よりも望ましいと思います。しかし、iPS細胞による治療のような画期的な治療法が解決されるまでの過渡的な時期には、移植医療は必要です。そのための臓器移植法改正でした。
ドナーの家族には、移植を受けた患者さんから手紙が届きます。その手紙が家族にとっては生きる励みになっていると記事は結んでいました。記事によると、臓器を提供したドナーのご家族にとっても息子さんの命が6人もの人の命を救うことになったことが誇りになっているようです。
臓器移植法改正の勉強会で知ったあるドナーの家族の方は「自分の娘の一部がだれかの身体の一部として今も生きていることがうれしい」といった趣旨のことをおっしゃっていました。
臓器移植法を改正する以前は、ドナー本人の意思が確認できなければ、臓器提供が不可能でした。しかし、法改正後はこの記事に出てくるご家族のように、家族の同意で臓器提供が可能になりました。
2010年の法改正以後に家族の同意でドナーになった例が何百件もあります。それで救われた命は1000人を大幅に超えていることでしょう。臓器移植法改正案を国会に提出し、成立させたことで救われた命があると思うと、うれしく思います。