いま平日朝の駅頭で配布している国政レポートの第41号です。駅を利用していない方に読んでいただきたく、転載します。
今の季節は寒くなく厚くなく、朝の駅頭がいちばん楽な時期です。コロナ危機以後は8月まで自粛しておりましたが、9月から駅頭活動を再開しました。コロナの影響なのか、手に取っていただける方が減りましたが、がんばって配っています。
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支え合う社会へ「いのちと暮らしを守る政権構想」
立憲民主党と国民民主党が合流して新党が誕生しました。党名も党首も変わりませんが、衆参88人だった国会議員は149人に増え、政権交代の受け皿をつくる一歩になったと思います。そして新党で大切なのは「どんな社会をめざすのか」というビジョンです。枝野幸男代表は今年5月「いのちと暮らしを守る政権構想」を発表しました。新党のビジョンを示す同構想の一部と背景をご説明させていただきます。
新型コロナウイルス危機であきらかになった問題
新型コロナウイルス危機は、経済成長至上主義で「小さな政府」をめざしてきた日本社会の脆弱さをあらわにしました。経済成長至上主義の結果が非正規雇用の増加です。コロナ危機で派遣切りや雇い止めが増え、飲食店等の倒産も急増しています。低賃金でギリギリの暮らしを送っていた人たちが、コロナ禍でまっさきに解雇され、最低限の衣食住さえままならない状況におかれています。アベノミクスで大企業や富裕層は豊かになりましたが、労働者の実質賃金は下がり、非正規雇用は増え、貯蓄ゼロ世帯が急増しました。コロナ以前から苦しかった庶民の暮らしが、コロナ危機でさらに悪化しています。
また「小さな政府」のかけ声のもと公務員は削減され、行政機能が弱体化しました。感染症対策の最前線の保健所は、1995年度の845カ所から現在の469カ所まで減少しました。保健所の常勤職員は、1995年度には約34,000人でしたが、2017年度までに約6,000人削減されました。
平時には保健所職員は「ムダな公務員」に見えたかもしれませんが、非常時に不可欠の人員でした。非常時に人手不足になり、コロナ危機に十分対応できない状況も生まれています。「小さな政府」は「小さなセーフティーネット」を意味することがわかります。
ポストコロナ:「支え合う社会」と「いのちと暮らしを守る政府」
新党がめざすのは、「支え合う社会」とそのための「いのちと暮らしを守る政府」です。「支え合う社会」の基礎は、医療、介護、保育、障がい者福祉などの対人ケア(ベーシック・サービス)です。保育士や介護士、看護士などの処遇を改善し、暮らしの安心と地域の雇用を守ります。子どもを育てやすい環境をととのえ、一人でも安心して老後の生活を送るためには、保育やケアワークの充実は欠かせません。
自民党の政治家が「自助・共助・公助」という時の本音は、「自己責任で政府に頼らず『自助』を第一にして、それでもダメならボランティアやNPOによる『共助』に頼り、最後の手段として政府の『公助』を頼りなさい」という意図だと思います。自己責任を強調する社会は、介護や子育て、障がい者福祉の負担を個人と家庭だけに押しつける冷淡な社会ではないでしょうか。
人は誰でも人生のどこかの時点で弱者になります。幼児期は誰でも弱者です。交通事故にあうかもしれないし、水害や地震で被災するかもしれません。コロナに感染するかもしれないし、老後は介護が必要になります。すべての人がいつ弱者になるかわかりません。弱者にやさしい社会は、みんなにやさしい社会です。リスクを個人や家族だけで背負うことなく、みんなで支え合い、安心できる社会をつくります。支え合う社会を築くには、社会保障制度と行政サービスの充実が欠かせません。「小さな政府」では安心社会は築けません。
また、最近の豪雨災害をみても、気候変動による災害の激甚化はあきらかです。コロナ危機からの回復のため、欧州連合(EU)やバイデン大統領候補は「グリーンニューディール」による「緑の景気刺激策」を訴えています。これは旧来型の公共事業バラマキによる景気刺激ではなく、気候変動対策に重点をおいた景気刺激策です。たとえば、分散型の再生可能エネルギーの普及により、災害に強い電力網をつくることができます。省エネのために公共施設や住宅の断熱工事を助成すると、地場の中小の建設会社などで雇用が生まれます。省エネ工事は、光熱費削減につながり、数年から十数年で元がとれるため有益な投資です。環境にやさしく、コスト削減にもつながる省エネ投資を政府が金融面で大々的に支援すべきです。また、災害に強い街づくりや水害対策など、いのちを守る防災インフラ投資は重要です。「いのちと暮らしを守る政権構想」は、新幹線や高速道路などの経済インフラよりも、防災インフラを優先します。