無味乾燥に思える統計をながめていて、「エッ」と驚く事実を発見するとつい人に話したくなります。農産物の輸出統計を何気なく見ていて、和牛輸出に関わる興味深い統計を発見しました。
冷凍牛肉の輸出先の国別データ
2010年 1)マカオ、 2)カンボジア、 3)ベトナム
2011年 1)カンボジア、 2)マカオ、 3)香港
2012年 1)カンボジア、 2)ラオス、 3)香港
2013年 1)カンボジア、 2)香港、 4)モンゴル
2014年 1)カンボジア、 2)香港、 3)タジキスタン
*畜産物の需給関係の諸統計データ(独立行政法人農畜産業振興機構ホームページより)
信じられないことに、冷凍和牛の最大の輸出先はカンボジアです。
最初は何かの間違いだと思いました。カンボジア人が和牛をモリモリ食べている図は想像できません。カンボジア人が和牛をモリモリ食べていないとすれば、迂回輸出(あるいは密輸)が行われている可能性が高いです。
第一に、輸出される牛肉の平均単価は、決して安くありません。カンボジアの一人当たりGDPが1,006ドル(2013年)です。月100ドル以下で生活しているカンボジア人が、キロ何千円もする牛肉をモリモリ食べているはずがありません。第二に、カンボジアの人口は約1500万人です。そんなに市場規模も大きくありません。よほどがんばらないと和牛をカンボジア国内で消費できません。
牛肉の輸入関税の低いカンボジアに輸入し、そこから第三国に再輸出しているとしか思えません。おそらくラオスやモンゴルも同様です。近隣の和牛好きの豊かな国に向けて、再輸出(密輸かも?)しているとしか考えられません。 第三国の候補としては、シンガポールのように日本と自由貿易協定を結ぶ国は除外できます。香港は直接輸入する例が多いです。やはり一番考えられる再輸出先国は中国です。おそらく中国の富裕層向けに再輸出され、関税逃れに使われているのでしょう。
数年前に横浜税関を視察した時に、中国人船員がよく和牛を密輸出すると聞きました。船員が日本のスーパー等で買った和牛を中国に密輸するとかなり儲かるそうです。かさばって大変そうですが、それでも利益が出るそうです。牛肉の輸入関税が高いのか、それとも、和牛の流通を独占している国営企業が、暴利をむさぼっているのか知りません。いずれにしても中国国内で和牛は高く売れるそうです。
こういう無味乾燥な政府統計のなかにも、東南アジアと中国の関係を想像させるような興味深いデータがあります。統計っておもしろいですね。