昨日のブログで福島県の再生可能エネルギー政策をご紹介しましたが、そういえば長野県の環境エネルギー戦略もすぐれていたことを思い出しました。
長野県は阿部守一知事の強いリーダーシップでエネルギー戦略を策定しました。阿部知事は自治官僚出身ですが、阿部さんが総務省から出向で横浜市副市長をされていた頃に知り合いました。勉強会等で何度かご一緒させていただきましたが、当時の阿部さんは新しいことにチャレンジする「官僚的でない官僚」でした。知事になられてからもますますご活躍です。
長野県のエネルギー戦略は、単に再生可能エネルギーを増やせばいいという発想ではなく、地球温暖化対策や地域経済への影響といった観点も重視した戦略的なビジョンに基づいています。経済成長と環境保全を両立できるエネルギー戦略を目指しています。
長野県のエネルギー戦略ですぐれている点のひとつは、省エネルギーを重視している点です。昨今の議論は自然エネルギーが流行ですが、実は最優先すべきはエネルギーの使用量を減らすことです。省エネルギーのための工夫は、コスト的にも割に合うことが多いので、経済性の観点からも説得力があります。 エネルギー消費(特に化石燃料)の削減は、そのまま地域経済へのプラスになります。長野県の県内総生産はだいたい8兆円ほど。一方、長野県分の化石燃料輸入額は約4千億円です。つまり4千億円が海外に出て行くお金です。
長野県の建設業総生産は約4千億円、農林水産業総生産は約1千5百億円です。長野県の主要産業に匹敵するほどのお金が、化石燃料の輸入のために使われています。この化石燃料の輸入にともなう海外への資金流出を減らし、そのお金が県内で回るようになれば、地域経済の活性化に役立ちます。
長野県は、第一に省エネルギーに投資し、次に自然エネルギーに投資する、という優先順位で取り組んでいます。再生可能エネルギーの普及は、地域経済の発展に役立ちます。太陽光発電や小規模水力発電など、再生可能エネルギーへの投資を行うと、投資のかなりの部分が県内に落ちます。小規模な工事が多いので、ゼネコンよりも、むしろ地場の中小事業者が受注しやすくて、県内の事業者が潤うケースが多くなります。
再生可能エネルギー関連の設備は維持管理に人手がかかり、雇用創出につながります。県外に流出していたお金が減ると同時に、県内の雇用増加と産業活性化につながります。仮に化石燃料代を4千億円から3千億円に低減することができれば、浮いた1千億円は県内で他のことに使われることでしょう。アラブの産油国に1千億円が流れるよりも、長野県内で1千億円が循環するほうが良いに決まっています。 長野県の省エネと自然エネルギーの推進策は、全国でモデルにできる内容だと思います。福島県や長野県といった地方の野心的なチャレンジを国もまねしたら良いと思います。