毎日新聞(3月20日)に「ナフサ免税」について投稿

昨日(2025年3月20日)毎日新聞朝刊の「発言」欄に投稿しました。タイトルは「温暖化対策 ナフサ免税縮小を」です。新聞記事をそのまま転載できないと思いますので、原稿(たたき台)段階の文章をご紹介させていただきます。お目通しいただければ幸いです。

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ナフサ免税削減で脱炭素化と税収増を

プラスチックや合成ゴム等の石油化学製品の原料として使われる揮発油(ナフサ等)は、租税特別措置法により揮発油税と石油石炭税が免税されている。これは「ナフサ免税」と呼ばれ、国内の石油化学産業の競争力を保つために導入された。な房免税は、租税特別措置の中で最大の免税項目となっており、令和6年度の試算では約3兆2000億円もの税収の減少につながっている。一般にはあまり知られていないナフサ免税だが、免税額の巨額さと化石燃料使用の抑制の観点から重要な課題である。

地球温暖化対策のために化石燃料の使用を減らすことは、現在の日本にとっては優先課題である。ある意味でナフサ免税は化石燃料の消費を推奨する政策であり、脱炭素化が叫ばれる時代にこれほど多額の税を減免する必要性が本当にあるのだろうか。高度経済成長期に石油化学産業振興のために導入されたナフサ免税は、気候変動時代の現在、見直す時期に来ている。さらにナフサの加工過程で生じる副生ガスも非課税だが、仮に課税すれば3千億円程度の税収が見込まれる。これも脱炭素時代にふさわしい免税とはいえない。

ナフサ免税の見直しは2010年に政府税制調査会で議論されたが、その当時は過度の円高や法人税率の高さを背景に石油化学業界が国際競争力低下の懸念を訴え猛反発し、ナフサ免税の削減には至らなかった。しかし、当時とは日本の経済環境が大きく変化している。今では行き過ぎた円安が問題視され、安倍政権下で法人税も大幅に下げられ、ナフサ免税を削減できなかった当時と日本経済を取りまく状況は大きく変わっている。しかも地球温暖化の悪影響がこれだけ顕著になり、気候変動対策の重要性は当時とは比べ物にならないほど高まり、政府の脱炭素化の方針も明確になった。

また、いま学校給食の無償化が議論されているが、そのために必要な予算は4900億円と見積もられている。大雑把にいえば、ナフサ免税の免税額を15%減らすだけで、全国の学校給食を無償化する財源を確保できる。

今こそ巨額のナフサ免税のあり方を見直す時期だ。地球温暖化対策と財源確保の二つの観点から約3兆5000億円ナフサ免税の削減に早急に着手し、石油化学産業の激変緩和の観点を踏まえ毎年少しずつ免税額を減らしていく必要があるだろう。