安倍政権6年半をふり返る(11):アベノミクスはうまく行っているのか?【円安誘導】

安倍政権の6年半をブログでふり返る参院選特別企画の第11弾です。2018年4月19日付ブログ「アベノミクスはうまく行っているのか?」の再掲です。円安誘導政策のプラスとマイナスなどについて書きました。


アベノミクスはうまく行っているのか? 【円安誘導】

安倍総理は「アベノミクスのおかげで名目GDPが50兆円増えた」という趣旨のことを選挙演説で言ってました。これはおおむね正しいです。しかし、“名目GDP”が増えたところで、実質賃金は上がっていません。円安誘導で物価が上がっているので、名目賃金が上がっても、実質賃金が下がっています。消費は活性化せず、実質GDPはあまり伸びていません。

また、2016年に内閣府がGDPの算出方法を変え、その結果GDP3%分くらい上方修正されていますが、それもアベノミクスの成果とは無関係です。単なる統計的な操作であり、実際に経済が成長したわけではありません。

それに「円建ての名目GDP」が増えたものの、円安誘導のせいでドル建てのGDPは大幅に減少している点も見逃せません。日本人は購買力という点では貧しくなっています。たとえば、1ドル80円から1ドル120円に円安が進めば、ドル建てでみた所得は一気に目減りします。2012年の日本のGDPは5.96兆ドルでしたが、2016年には4.93兆ドルです。ドル建てで見たら、日本経済の規模は大幅に縮小しています。

経済学用語でいえば、円安ドル高が進むということは、「交易条件が悪化している」といえます。「交易条件」とは、輸出商品と輸入商品の交換比率のことです。一国の貿易利益(つまり貿易による実質所得の上昇)を示す指標となります。円が安くなるということは、交易条件が悪化するということです。円が安くなれば、同じ金額でより少ない物しか輸入できなくなるわけです。

輸出を増やすために通貨安へ誘導することを「近隣窮乏化政策」と呼ぶことがありますが、国民の実質所得を減らすことになるので下手をすれば「自国民窮乏化政策」になりかねません。アベノミクスの円安誘導は、この「自国民窮乏化政策」の一例かもしれません。

たとえば、外国人観光客が増えている最大の理由は、円安のおかげで「日本は物価が安い」ということだと思います。中国人や韓国人の観光客が、日本人のホスピタリティや日本食のおいしさに突然目覚めたわけではないと思います。テレビの「日本 スゴイですね」的な番組を見ていたら、本質を見失います。

他方、円安が進めば、海外旅行や海外留学には不利な状況になります。旅行収支が黒字になるのはある意味で当然です。「外国人が日本に旅行しやすくなり、日本人が海外旅行しにくくなる」という政策は、手放しでほめられる政策でしょうか?

最近の「円安」イコール「日本にとってプラス」という風潮は、そろそろ考え直す時期かもしれません。少なくとも消費者の目線でいえば、ガソリンや食品が値上がりし、海外旅行がしにくくなり、マイナスの方が大きいのは明らかです。