西日本新聞(2月9日朝刊)に総務省の2018年人口移動報告が載っていました。福岡市の転入・転出超過数のデータが目を引きました。
福岡市の転入超過 : 6,138人
(うち 0~14歳): -467人
(うち 15~64歳): 5,822人
(うち 65歳以上): 783人
私が注目したのは福岡市の「0~14歳の転出超過が467人」という数字です。0~14歳の子どもが自分の意志でひとりで引っ越すことは通常ありません(中高一貫校の学生寮に入る13歳の子どもの引っ越しといった例はごくわずかでしょう。しかもこういった例で住民票を移すか疑問です。)。
つまり子育て世帯に限っていえば、転入より転出が多いということです。そこから推測されるのは、子育て世帯は(1)福岡市の子育て環境に満足していない、(2)福岡市の子育て支援策が不十分である、といったことです。
福岡市は「人口が増えているから福岡市は素晴らしい」と喧伝していますが、確実に増えているのは高齢者であり、子育て世帯は減っている可能性があります。
また、福岡市は社会的流入(転入)で人口は増えていますが、福岡市で子どもがたくさん生まれているわけではありません。
数年前のデータによると福岡市の合計特殊出生率(一人の女性が生涯で産む子どもの数の平均)は1.24でした。その年の合計特殊出生率に関しては、全国1,741市町村のなかで福岡市は1,589番目でした。下から数えた方が早いです。あまりほめられた出生率ではありません。
他の市町村の人口を福岡市が吸い寄せると、その市町村の人口は減ります。福岡市の一人勝ちの背景には、過疎化が進む県内や九州内の市町村の犠牲があります。社会的流入による人口増は、単なるパイの奪い合いであり、日本全体でいえば人口減少を防ぐことにはなりません。
福岡市当局がめざすべき政策は、社会的流入による人口増よりも、出生率の上昇による人口増だと思います。子育て世帯への支援を強化したり、教育・子育て環境を改善したり、女性が働きやすい環境を整えたりすることで、出生率を上げることこそ地方自治体としての政策目標にすべきです。福岡市は何か考え違いをしていると思います。