アベノミクス敗戦の戦後復興に向けて

毎日新聞の倉重篤郎専門編集委員の「アベノミクス敗戦に備えよ 湛山の先見と楽観に学ぶ」(サンデー毎日、2016年12月11日号)という記事は、とても興味深い内容でした。

石橋湛山(のちに首相)は戦時中から、敗戦に備え、戦後経済の再建を研究する会を大蔵省内に設置しました。大っぴらに「敗戦後の研究」とは言えないので、表向き「戦時経済特別調査会」という名称でカモフラージュしました。学者や官僚を集めて、朝鮮の独立や台湾や満州の中国への返還後を想定して、戦後の日本経済のあり方を研究しました。

アベノミクスの行き詰まりが明らかになりつつある今こそ、石橋湛山の先見性を見習って、「アベノミクス敗戦」の戦後処理について真剣に検討すべき、というのが倉重さんの主張です。朝鮮や台湾、満州を放棄することは、原子力発電を放棄するに等しいインパクトだと倉重さんはいいます。「満州は日本の生命線」などと戦前は言っていましたが、「生命線」がなくなった戦後の方が経済大国になりました。

金融緩和が行き過ぎてマイナス金利になっています。マイナス金利の副作用はこれから出てくることでしょう。所得格差は拡大する一方です。トランプ効果で円安になりましたが、どこまで続くかわかりません。アベノミクスの柱だったTPPも消滅の危機です。北方領土交渉の進展も不透明ですが、ロシアとの経済協力で経済が活性化するとも思えません。トランプ効果やOPECの減産決定で一時的に株価が上がっていますが、アベノミクスとは無関係の要素です。アベノミクスの限界は明らかで、アベノミクス後のことを考え始める時期です。

民進党こそが「アベノミクス敗戦」の敗戦処理のための「戦時経済特別調査会」の現代版を立ち上げるべきです。政権交代をめざすなら、政権交代後のビジョンを示すことが必須です。学者や民間エコノミスト等の外部の有識者の協力を得ながら、党として「アベノミクス後の経済復興プラン」を検討すべきだと思います。それが次の衆院選の政権公約の核になると思います。