中曽根康弘首相の言葉【歴史認識】

先日、中曽根康弘首相の国葬がありました。長期政権を担った政治家でもあり毀誉褒貶はありますが、戦争を経験した世代らしい立派なお言葉を残されています。この機会にご紹介させていただきます。ぜひ自民党の若い世代の議員に知ってほしいと思います。

太平洋戦争を経験した世代として、戦争を知らない世代に伝えておかねばならぬことがある。それは、二十世紀前半の我が国の帝国主義的膨張や侵略によって被害を受けたアジアの国々の怨恨は、容易には消え去らないであろうということだ。日本独特の「水に流す」は日本以外では通用しない。韓国や中国における現在の反日教育、ナショナリズムを高揚する教育をみれば、心のわだかまりが溶解するには長い時間と期間を要すると考えなければならない。こうした考えに立って、我々の歴史の過失と悲劇に対して、率直な反省を胸に刻みつつ、この失敗を乗り越えるための外交を粘り強く進めて行く必要があることを我々は今一度、銘記しなければならない。そうした意味で、日本の歩むべき道は、失敗に対する深い思慮とともに、アジアと国際社会の一員として、平和を守り、互いの利益と協力を尊重しながら国際社会に貢献して行くことである。(中曽根康弘「宰相に外交感覚がない悲劇」新潮45:2012年11月号)

まったく同感です。

私なりに大東亜戦争を総括するなら、次の五点に集約されます。一、昔の皇国史観には賛成しない。二、東京裁判史観は正当ではない。三、大東亜戦争は複合的で、対米英、対中国、対アジアのそれぞれの局面で性格が異なるため認識を区別しなければならない。四、しかし、動員された大多数の国民は祖国防衛のために戦ったし、一部は反植民地主義・アジア解放のために戦ったと認識している。五、英米仏蘭に対しては普通の戦争だったが、アジアに対しては侵略的性格のある戦争であった。(中曽根康弘「自省録」より)

タカ派のイメージが強い中曽根康弘首相も「アジアに対しては侵略的性格のある戦争であった」とはっきり書かれています。

中庸で健全であるべき愛国心に対して、偏狭なナショナリズムが反作用的に出てくるのはありがちな話だが、国益を長期的観点から考え、短期的に起こる過度のナショナリズムに対して身を以て防波堤としてこれを抑えるのは政治の役割である。当然のことながら、相手国の言動や行動に刺激され、日本のナショナリズムを扇動するようなことがあってはならないし、国民への丁寧な説明と熟慮を重ねた冷静な外交こそが求められる。(中曽根康弘「宰相に外交感覚がない悲劇」より)

菅総理にもよくよく心してほしいと思います。

中曽根総理は「外交四原則」ということをおっしゃっていました。それは、(1)実力以上のことはやらない、(2)賭けでやってはならない、(3)内政と外政は互いに利用し合わない、(4)世界の正統な潮流に乗る、の4点です。

至極まっとうだと思います。いまの自民党政権に中曽根総理のような外交感覚をもった政治家が必要なのだと思います。昔の保守政治家は、今の自称「保守」政治家より、だいぶ健全な外交感覚を持っていたと思います。