ODAによる石炭火力発電所建設:外務委員会質疑より(2)

昨日(5月20日)衆議院外務委員会で30分の質疑を行いましたが、その一部の内容をご紹介させていただきます。

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いまや石炭火力発電所は時代遅れです。もはや「化石」化しつつあります。最新鋭の高効率の石炭火力発電所でも、単位当たりのCO2排出量は天然ガスのコンバインド発電の約2倍です。

石炭火力発電所が環境性能で劣るにも関わらず推進されてきたのは、「石炭が安い」という理由でした。しかし、最近ではニューヨーク原油先物相場で史上初のマイナス価格がつき、石炭の価格競争力は危ういです。今週発売の経済誌のある記事の見出しは「原油暴落で石炭からLNG大転換」でした。石油とLNG(液化天然ガス)価格は連動しています。LNGが安くなれば、石炭の価格競争力は消え去ります。

また、社会的責任投資とかESG投資という言葉が定着し、化石燃料からの投資の引き上げ(ダイベストメント)も進んでいます。大手商社も石炭火力発電への投資を引き上げ、メガバンクも新規投資を控えているのが現状です。

太陽光発電や風力発電の高効率化と低コスト化が急激に進み、気候変動対策としての脱炭素化がトレンドです。日本とトランプ政権の米国だけがトレンドに乗り遅れています。

米国大統領選挙が近いですが、民主党のバイデン候補の国内政策の柱は「グリーン・ニューディール」です。バイデンがフォーリン・アフェアーズ誌で発表した「アメリカのリーダーシップと同盟関係」という論文では、バイデン氏が大統領に当選したあかつきには、政権発足1日目にパリ協定に復帰と宣言しています。すると日本は先進国のなかで、脱炭素化に逆らっている点で孤立してしまいます。

いまや石炭火力発電所をODAで支援するのは、先進国にあるまじき行為です。即刻やめるべきと指摘しました。しかし、政府の答弁は、はっきりしませんでした。

ブルームバーグによると2014年段階では石炭火力発電所が世界でもっとも低コストでしたが、2019年段階では世界の3分の2の国で再生可能エネルギーがもっとも低コストの電力源です。米国、中国、英国、ブラジル等の主要国でも、再生可能エネルギーがもっとも安いエネルギー源です。

再生可能エネルギーの低価格化と、石油価格の暴落で、石炭火力発電はコスト面で太刀打ちできなくなる可能性が高いです。そうなると「座礁資産」となってしまう恐れがあります。先進国の金融機関が石炭火力発電所に投資しなくなったのは、環境配慮というより、金融面のリスクを配慮してのことです。

こんな状況で新規に石炭火力発電所を建設しても、耐用年数の終わりまで使い続けられる見込みは薄いでしょう。まだ使えるうちに石炭火力発電所の設備が座礁資産になってしまう恐れが大きいです。お金を借りて石炭火力発電所を建設する途上国の側から見れば、詐欺に近い行為だと思います。あとで恨まれるでしょう。

日本を含めて西側諸国は、中国の発展途上国向け融資が収益性を無視して途上国を借金漬けにしている、と批判しています。将来性のまったくない石炭火力発電所を円借款で輸出するのは、割にあわない投資を途上国に強いている点で、中国の援助と変わりがありません。親切のつもりが仇になってはODAの意味がありません。

石炭火力発電は、効率的でもなく、環境にやさしくもなく、倫理的でもなく、経済的でもなく、デメリットばかりで、日本の国際社会におけるイメージ低下につながります。こんな割にあわない円借款は絶対にやめるべきです。