外務委員会の質問要旨:コロナ危機とODA他

本日(5月13日)衆議院外務委員会で30分間の質疑を行いました。発言要旨をご紹介させていただきます。

【コロナ危機に関わるODAについて】

  • 一次補正予算で840億円の新型コロナウイルス対策のODA予算が組まれた点は評価。二次補正でもコロナ対策のODAに手厚く予算配分をお願いしたい。
  • コロナ感染は発展途上国で深刻。発展途上国では、普段から医療水準が低く、貧しくて栄養失調状態の人や安全な水にアクセスできない人が多い。
  • 1918~1919年のスペイン風邪の流行で死者の約60%は西インド地域に集中。西インド地域で少なくとも2000万人が亡くなったといわれている。今回のコロナ危機でも同じことが起きかねない。
  • 読売新聞(4月6日)の報道によると、アフリカのマラウイは人口1800万人に対し、重篤な症状者用の集中治療室が25床しかない。防護服やマスクもまったく足りていない。容易に医療崩壊が起きる。普段から医療崩壊に近い国々では外部からの援助が必要不可欠である。

Q1.日本のNGOに対する支援強化について

  • 一般的に緊急人道援助の現場では、UNHCR職員が難民キャンプで食料を配給することは少ない。WFP職員が食料配給することも少ない。UNICEF職員が自ら井戸を掘ることもおそらくない。国連専門機関と契約した国際NGOや現地NGOのスタッフが“implementing partner”として現場で働いているのが実情である。
  • たとえば、現地政府が機能している場合は、UNICEFやUNDPのカウンターパートは現地政府機関になる。しかし、紛争などで政府が機能していない国では、NGOが国際機関のパートナーになる。現地NGOの実施能力が低い国もあり、そういう国では国際NGOが国連機関のパートナーとして働いている。
  • つまり国連に拠出したとしても、現地で実際にお金を使うのはNGOというケースが多い。だったら外務省から直接日本のNGOに資金支援することを重視すべき。その方が途中の取引費用が少なくなるし、日本の納税者にも説明しやすい。
  • コロナ危機対応にあたっては、「日本NGO連携無償資金協力」やジャパン・プラットフォーム拠出金を増やすべき。すでに日本のNGOの13団体、15か国、24事業で合計4億8,150万円の要請をまとめている。外務省は日本のNGO支援に力を入れてほしい。

【回答】茂木外務大臣から「一応」好意的答弁あり。ただし、本気度は不明。

 

Q2.円借款の債務繰り延べについて

  • 世界銀行グループと国際通貨基金(IMF)は3月25日に所得水準の特に低い途上国の債務削減についてG20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)に対して共同声明を発表した。
  • 4月15日のG20の財務相・中央銀行総裁会議のコロナ危機についての声明では、「猶予を求める最貧国の債務返済の時限的な猶予を支持する」としている。
  • しかし、ここでいう「最貧国」の定義が「IDA借入国」であれば、日本の主要な被援助国は含まれない。ASEANでは、カンボジア、ミャンマー、東チモールの3か国しか含まれない。インドネシアやベトナム、フィリピンは含まれない。これらの国への配慮も必要。
  • 最貧国だけではなく、コロナ危機が招いた経済危機により、最貧国に転落しかねない国にも債務の支払い猶予を拡大すべき。
  • 医療システム維持や医療従事者の人件費等に回すお金が減らないよう、債務返済猶予を開発途上国一般への拡大すべき。もともと日本の円借款対象国には最貧国は少ない。最貧国だけではなく、ASEAN諸国のようなにある程度発展している国にも円借款などの融資を行い、返済は猶予すべき。

 

Q3.公衆衛生教育、保健教育、基礎教育等の国際基金への拠出について

  • コロナ危機対策は狭くとらえて防護服や医薬品、医療機器の供与や病院への支援などに限定すべきではない。より広く公衆衛生環境の改善や感染症や保健にの知識の普及や啓発、子どもの栄養改善といった活動まで支援すべき。
  • 初等教育を受けていない人は公衆衛生の知識も低く、仮に知識があってもマスクが入手できなかったり、安全な水が入手できない状況では、感染予防は困難である。
  • たとえば、「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」という国際的な取り組みがある。日本政府も含めて各国が拠出し、世界銀行に事務局が置かれている。そのGPEはすでにコロナ感染関係で2億5千万ドルの支援を決定し、感染症対策の啓発キャンペーンや保健教育や学校再開に向けた支援を表明している。GPE基金にも日本政府として拠出をしてほしい。
  • もうひとつ「 教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait: ECW)」という2016年の世界人道サミットで設立した基金がある。紛争や災害等の緊急時の教育や長期化した紛争地の教育に特化したファンド。日本政府は拠出実績がない。日本政府もコロナ災害を契機に拠出を検討すべき。感染症対策のガイダンスや保健教育、学校の水供給や衛生施設の整備に資金が必要とされている。

 

Q4.外務省とシンクタンクの連携について

  • 外務省は米国等の大学やシンクタンクに5~6億円といったかなりの額の資金提供を行っている。外国のシンクタンクへの資金提供には意義があることは認めるが、1つの研究所に5億円といった多額の拠出することは妥当なのか。多すぎないか。
  • また、外務省が設立と運営に関わっている日本国際問題研究所の予算が8億円(令和元年度)に対して、英国の国際問題戦略研究所(IIS)8億9600万円(令和元年度)というのは均衡を欠くのではないか。もう少し日本のシンクタンクにも資金提供すべきではないか。

<日本政府のシンクタンク等への助成の例>

  • コロンビア大学(日本政治・外交を専門とする教授職の恒久的設置)4億8500万円(平成26年度)、11億円(平成27年度)。2年で約16億円。
  • ジョージタウン大学(日本政治・外交を専門とする教授職の恒久的設置)5億5千万円(平成28年度)
  • マサチューセッツ工科大学(日本政治・外交を専門とする教授職の恒久的設置)5億5千万円(平成28年度)
  • ニューヨーク大学法科大学院、トロント大学マンク国際問題研究所 それぞれ6億円(平成29年度)
  • ハドソン研究所(ジャパンチェア設置。ファンドとして運用して永続的に支援)5億6千万円(平成31年度)
  • 国際問題戦略研究所(IISS:英国)8億9600万円(令和元年年度)
  • 日本国際問題研究所:約8億円(令和元年度、平成30年度)。

【回答】かみ合った答えはない。後ろ向き。