日米首脳会談に関し、マスコミ報道は好意的ですが、問題もあったと私は思います。北朝鮮のミサイル発射や尖閣諸島の問題については、トランプ大統領の前向きな発言を引き出せた点は評価できます。
他方、人種的偏見や女性蔑視で問題視されたり、一部のイスラム教国の国民に入国制限を課したりと、問題の多いトランプ大統領にベッタリの姿勢で良いのでしょうか。これまで日米同盟といえば、民主主義や人権、市場経済、自由貿易といった共通の価値観を有する同盟国と言い続けてきました。しかし、トランプ大統領と共通の価値観を持つと言えるのでしょうか。あるいは、言って良いのでしょうか。
他の先進民主主義国の首脳が、トランプ大統領の姿勢に対して批判的な反応をしているときに、日本だけが突出してトランプ大統領と蜜月関係に入るのはリスクです。欧州諸国がウクライナ問題でロシアに経済制裁を課しているときに、プーチン大統領との蜜月を演出した安倍総理は、他の先進民主主義国の行動規範とはかなりずれています。トルコのエルドアン大統領も国内の人権問題で批判されていますが、安倍総理とは仲良しです。安倍総理は人権や民主主義といった点で疑問を持たれる国の首脳とばかり蜜月関係にあります。むかし安倍総理は「価値観外交」と言ってたような記憶がありますが、「価値観外交」はいつ取りやめたのでしょうか。
さらに驚いたのは、昨日の衆議院予算委員会の質疑で、安倍総理は次のように発言したそうです。
トランプ米大統領に不安を持っている国々に、大統領がどう考えているかを伝えたい。
これを日常の言葉で表現すれば、「使いっぱしり」あるいは「パシリ」ではないでしょうか。いつから日本の総理大臣は、アメリカ合衆国のトランプ大統領の意向を伝えるメッセンジャーボーイになったのでしょうか。それに、アメリカと自国の間を日本に取り持ってもらいたいと思っているような主体性のない国が、本当にたくさんあるのか疑問です。余計なお世話をする必要はないと思います。
ここまでアメリカ政治に振り回され、主体性のない外交をやっている国も珍しいと思います。トランプ大統領のツイッターの一言一句に右往左往するのはいかがなものかと思います。また、三権分立の確立したアメリカ政治においては、大統領の権限は議会や司法によってかなり制約されます。裁判所の判断で入国禁止令が差し止められたのが良い例です。トランプ大統領の弾劾の可能性さえ、すでに語られ始めています。トランプ政権がこけたら、日本も一緒にこける、というのでは困ります。
トランプ大統領の言いなりになるばかりではなく、上下両院の共和党・民主党議員にロビー活動をしたり、シンクタンクから情報収集したり、いろいろ他にもやることがあると思います。トランプ大統領の伝令役は、世界の恥さらしです。トランプ大統領の一の子分を目指し、木下藤吉郎のように忠誠を尽くした結果、中東の紛争に自衛隊を送らされたりしないように、注意してもらいたいものです。安保法制の議論のときに「アメリカの戦争につき合わされて海外に自衛隊を送るのはごめんだ」という批判がありましたが、「トランプの戦争」につき合わされるのはさらに嫌な感じです。このままいくと日本はトランプ王国の属国みたいになってしまうように感じます。主体性なき「トランプ追従外交」で本当にいいのか、立ち止まって考えるべきです。