現職衆議院議員時代に書いていたブログのタイトルは「蟷螂の斧」(とうろうのおの)でした。報道各社の政治部記者や編集委員・論説委員にも意外と読まれていました。新聞や雑誌の記事で何度か引用され、永田町では「蟷螂の斧」はそこそこ知名度がありました。しかし、昨年(2015年)5月末に民主党埼玉県第13区支部長の任期を終えるタイミングでいったんブログを書くのをやめ、サイトも閉じて過去のブログも削除しました。
しかし、再び国政にチャレンジすることを決意し、今年(2016年)2月から政治活動とブログを再開しました。ブログを再開したものの、しばらくの間、ブログのタイトルはほったらかしでした。実のところ、単に忘れていただけです。選挙区も埼玉県から福岡県に移し、新しい気持ちで再チャレンジするので、ブログのタイトルも変えようと思いたちました。ブログのタイトルの候補を3つに絞り込み、事務所のスタッフの意見を聞いてみました。
1.省煩禄(せいはんろく)
田中秀征先生(元総理補佐、元経済企画庁長官)のコラムで「省煩」(せいはん)という言葉を知りました。「必要なことは必ずするが、不必要なことは決してしない」という意味だそうです。余計なことに手を出していると、本当に必要なことの障害になることもあります。田中秀征先生いわく;
政治家にとってまず必要なことは、重要な現場に足を運ぶこと。そして、断固として時間を割いて、書を読み、深く考えることだ。昔の指導的政治家は、例外なく省煩を貫き、万巻の書に囲まれ、独り静かに考える時間を大切にしていた。
私も「省煩」を大切にして、立派な政治家になりたいと思っています。そこで「省煩禄」を候補に挙げました。しかし、、、 事務所のスタッフに不評だったのでボツ。
2.一利一害
モンゴル帝国(元)の宰相の耶律楚材の言葉「一利を興すは、一害を除くにしかず。一事をふやすは、一事を減らすにしかず。」を短くしたものです。消極的な印象を受けるかもしれませんが、私は好きな言葉です。税金のムダ使いをなくすとか、老朽化したインフラを修復するとか、そういう地味な政策課題が好きな私にはピッタリの言葉です。
いつの時代も政治家というのは、功名心に駆られて何か目新しいことをやろうとします。安倍政権には、新しいことをやって(一利を興して)「歴史に名を残したい」というタイプの政治家が多いように感じます。首相や外務大臣といった責任ある地位に就くと「歴史に名を残したい病」に感染しがちです。名誉欲という私欲に打ち勝つ自制心が大切です。「目立ちたがり屋で良い仕事をした外務大臣はいない」と日本の政界では昔から言われてきました。
目先の人気取りに走らず、目の前にある問題をひとつひとつ着実に解決していく政治家になりたいと思います。そんな思いを込めて「一利一害」を候補に挙げました。しかし、、、 事務所のスタッフからは「地味だ」と一蹴されました。残念ながら不採用。
3.蟷螂の斧(とうろうのおの)
最後に昔のブログのタイトルも候補に入れました。「蟷螂(とうろう)」とはカマキリのことです。事務所のスタッフによれば、読みがわかりにくい漢字だけど、カマキリというのが、かわいげがあっていいとのこと。結局これに決まりました。迷いに迷った結果、元のタイトルに戻っただけでした。
「蟷螂(とうろう)の斧」というのは、斉の荘公の馬車を止めようとカマキリが前足をあげて立ち向かった、という故事によります。辞書的な定義は「弱小のものが、自分の力量もわきまえず、強敵に立ち向かうことのたとえ」です。
おかしいことはおかしいと声を上げ、強い相手であっても、立ち向かっていく心意気を持ちたいと思います。不利な状況にあっても、信念をつらぬいて、まっすぐに行動していきたい、という思いを込めて「蟷螂の斧」にしました。
ちなみに、斉の荘公のエピソードはオチがなかなかです。
斉の荘公が狩りに行ったときに、カマカリが前足を振り上げ車の輪を打とうとした。荘公が「これは何という虫だ」と問うと、「カマキリという虫で、進むことしか知らず、退くことを知りません。自分の力量をかえりみず、相手に立ち向かっていきます」と答えたところ、荘公は「この虫が人間だったら天下の勇武となろう」と言った。そして車を回らせて、カマキリに道を譲った。
蟷螂の斧。強い相手でもくじけずに立ち向かっていきたいと思います。