今年は落選という苦難と挫折の年になってしまいましたが、それでも挫けずに毎年恒例の「2021年読んだ本のベスト10冊」をご紹介させていただきます。
1位 フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー 2016年『超予測力』早川書房
タイトルの「超予測力」はイケてませんが、実証研究に基づいて書かれたとても良い本です。政治や外交などに関わる「予測力」の身につけ方が学べるマニュアルです。予測を外しがちなのは、「自信をもって言い切る人」や「わかりやすく断定する人」といったポイントは首肯できます。読み物としてもおもしろいです。外交や安全保障に関わる人は読むべきだと思います。
2位 ポール・ホーケン 2021年 『ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法』 山と渓谷社
地球温暖化をくい止めるのに有効な100の方法をより費用対効果が高い順番に並べた本です。読み物というより、参照するための本ですが、おもしろかったです。国のかじ取りをする政治家、地方自治体の首長や地方議員には必読書だと思います。
3位 ナシーム・ニコラス・タレブ 2017年『反脆弱性(上・下)』ダイヤモンド社
ナシーム・ニコラス・タレブは「ブラック・スワン」で有名ですが、「反脆弱性」という概念も提唱しています。危機や変化に強くなるための本です。読み物としてもおもしろく、あきずに読めます。
4位 アンデシュ・ハンセン 2020年 『スマホ脳』 新潮新書
政府が進めるGIGAスクール構想のような教育のICT化がいかに危険かがわかる本です。日ごろから思っていたことを実証的に記述してくれている点がすばらしい。教育政策に関わる人、あるいはお子さんが学齢期の方には特にお薦めです。「スマホ依存症」気味の方にもお薦めです。スマホは控えめに。
5位 井手英策 2021年『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った?』小学館
尊敬する井手英策教授の著書です。とても読みやすく、わかりやすい良書です。格差で分断された社会を立て直す方法について考える本です。大学生のインターンに強く薦めて無理やり読ませました。
6位 マイケル・イグナティエフ 2015年 『火と灰』 風行社
カナダ自由党の党首であったマイケル・イグナティエフが、自らの落選経験と政治経験を書いた本です。落選した私にとっては心にしみる文章です。民主主義や選挙について考える上でも、地味ながら名著だと思います。
7位 ジェイン・コービン 1994年 『ノルウェー秘密工作』 新潮社
ノルウェー政府によるパレスチナ和平交渉仲介の舞台裏を描いた本です。イスラエルとパレスチナの両方の関係者のやり取り、そして絶妙な距離感で仲介したノルウェー政府の努力がよくわかる本です。パレスチナ和平は残念ながらその後はうまく行っていませんが、あきらめずに和平交渉を再開するためにも前例を学ぶことには意義があります。いつか外務大臣になって紛争調停をしてみたいと夢見ておりましたので、そのための準備のつもりで読んだ本です。
8位 片山義博 2020年 『知事の真贋』 文春新書
各都道府県のコロナ対応の巧拙を見れば、知事の真贋がわかります。テレビ向けのパフォーマンスは上手でも、コロナ対策のパフォーマンスは最悪だった知事が誰だったかがよくわかります。尊敬する片山義博教授(元知事)のご著書で読みやすい本です。
9位 小松光、ジェルミー・ラプリー 2021年 『日本の教育はダメじゃない』 ちくま新書
国際比較すれば、「日本の教育はダメじゃない」のは明らかです。にもかかわらず、現場やデータを無視して「過剰な改革」を押し付けてきたのが、自民党政権の「教育再生」だったと思います。多額の予算をGIGAスクール構想に投じても、おそらく学力向上にはまったくつながりません(実証研究の成果から明らかです)。愚かな教育改革をやめるためにも、日本の教育の現状を客観的かつ等身大に見つめることが大切です。そのためには良い本です。読みやすいです。
10位 明日香壽川 2021年 『グリーン・ニューディール』 岩波新書
アメリカ発のグリーン・ニューディールの動向についてまとめた本ですが、日本でも参考になると思います。気候変動対策は待ったなしですが、日本の政府も産業界も大幅に出遅れています。特に心配なのがトヨタです。政治家も行政官も企業人もこの本を読むべきだと思います。