民進党の代表に望むこと(2)

 

この数年で自民党のイデオロギー的純化路線が進んでいます。タカ派からハト派まで、自主憲法制定論者から護憲派まで、幅広いのが昔の自民党的な包容力であり、包括政党としての自民党でした。河野洋平元衆院議長のように憲法9条を守ることを信条にしている自民党政治家もいました。しかし、いまや安倍1強といわれるなかで、安倍カラーで染まり、自民党内の多様性がなくなりつつあります。

欧州では極右ポピュリスト政党が伸びていますが、日本では極右ポピュリスト支持層をうまく安倍自民党が取り込み、極右ポピュリスト政党が弱体です。現状では「日本のこころを大切にする党」が唯一の極右ポピュリスト政党ですが、参院選でも惨敗でした。新しい右派ポピュリスト路線、プラス、古い利益誘導政治の再強化という、ハイブリッドで安倍総理は強い政権基盤をつくっています。

民進党が、右傾化した自民党に対抗するためには、社会民主主義(中道左派)と穏健な保守(かつての自民党ハト派:中道右派)の2つの支持層に働きかけるべきです。民進党は、穏健な中道政党をめざすべきです。経済成長至上主義から脱却し、社会の再生やセーフティネットの充実、貧困問題の解決に取り組む党をめざしてほしいと思います。安全保障政策では、戦後保守の伝統ともいえる「軽武装」路線を堅持し、穏健な平和外交路線をとるべきだと思います。非武装中立や自衛隊廃止といった非現実的な路線はとらないが、タカ派の軍拡路線もとるべきではありません。

また、民進党は、自民党と改憲競争をする必要はないと思います。国民的コンセンサスのもとで憲法をより良いものにすることは可能だと思います。しかし、自民党がぶっそうな改憲案を用意していて、しかも3分の2の議席を持っているこの時期に、憲法改正の議論をするのは危険だと思います。「安倍政権の間は憲法改正の議論には応じない」というのは妥当な判断だと思います。「未来永劫 憲法を変えない」とまでいいませんが、「安倍総理の影響下では憲法を変えさせない」というのは許される主張だと思います。

また、「防衛費を増やし、米軍との協力を強化することが、現実路線である」という素朴な思い込みにとらわれるタカ派の人には、代表になってほしくないです。沖縄県の基地問題でも強引なやり方はすぐにやめさせなくてはいけません。専守防衛に徹した自衛隊と日米同盟は必要なインフラだと思います。しかし、日本と無関係の紛争に積極的に介入すべきではないし、「安全保障のジレンマ」に陥らないようにアジアの軍拡を止めることを考えるべきだと考えます。

1970年代、1980年代には「今にもソ連が北海道に上陸してくる」と恐怖感をあおる人たちがいました。振り返ってみると、当時のソ連軍の上陸作戦用の船舶や機材、制空権・制海権を考えれば、ソ連軍には北海道に上陸する能力はなかったと思います。いまの中国軍が当時のソ連軍よりも脅威なのかわかりません。中国海軍の一部が暴走するような形での国境の小競り合いには注意が必要ですが、全面戦争の危険が迫っているという状態ではないと思います。戦争を未然に防ぐ外交に全力を注ぐべきです。防衛費増額、武器輸出促進(潜水艦等)、ODAによる他国軍隊の支援、フィリピン軍への海自機の貸与等、安倍政権下で軍事化がエスカレートしています。こうした動きを転換するのが、民進党の役割だと思います。