バングラで日本人が犠牲に

バングラデシュのテロ事件で7人の日本人が犠牲になりました。本当に残念です。ご冥福を心からお祈り申し上げます。

最初に報道を聞いたときには、まだ事件の全容はわかりませんでした。「人質のなかに日本人がいるらしい」という報道でした。バングラデシュにいる日本人といえば、かなりの確率でJICAやNGOの関係者です。最初に思ったのは、「もしかしたら知り合いや元同僚が人質のなかにいるんじゃないか?」ということでした。JICAやNGOの友人や元同僚たちは無事だろうかと心配になりました。

私の知り合いは犠牲者に含まれていませんでしたが、犠牲になったのはやはりJICA関係者でした。JICAのプロジェクトで派遣されていた建設コンサルタント会社の方々が亡くなられました。途上国のインフラ整備のために生活環境の厳しい土地でがんばっていた日本人は、日本にとって誇りだと思います。そういう方々が犠牲になったのは、ほんとうに残念です。

私もかつてバングラデシュで働くことを考えたことがありました。バングラデシュの農村の貧困対策プロジェクトのポストに空きができ、バングラデシュ赴任の可能性がありました。学生時代から憧れていたNGOがバングラデシュで活動していたこともあり、20年以上前からバングラデシュに興味がありました。そのときは別の仕事が先に決まったので、バングラデシュ赴任は幻に終わりました。しかし、バングラデシュ赴任がなくなったのは、ほんの紙一重の差でした。

バングラデシュといえば、国際協力業界で働く者にとっては興味の尽きない土地です。創設者がノーベル平和賞を受賞して有名になったグラミン銀行(女性のためのマイクロファイナンス)やBRAC(学校運営や農村開発、マイクファイナンス)という世界的に有名で大規模なNGOやNGO的銀行が存在します。バングラデシュで働けば、いろいろ勉強できることが多いだろうと思っていました。

以前のバングラデシュは、イスラム原理主義の脅威といったイメージはなく、ストや政治的混乱、一般犯罪は多いものの「すごく怖い国」というイメージではありませんでした。アジアの最貧国のひとつで生活環境は厳しいですが、グラミン銀行やBRACのようなNGOがたくさんあり、経済も成長していて「希望のある国」という印象を持っていました。

そのバングラデシュでこんな事件が起こったのは、ほんとうに残念です。もし私がバングラデシュに赴任していたら、こういう悲惨な事件に巻き込まれていたかもしれません。他人事とは思えません。

安全対策の徹底といったことも必要ですが、それ以上に残されたご家族の皆さんへの手厚い支援が必要だと思います。日本が国家として実施する国際協力事業で犠牲になった方々のご遺族の支援には、国として取り組む必要があると思います。国策として途上国援助に積極的に取り組むつもりであれば、国が全面的に犠牲者のご遺族をサポートすべきです。