安倍総理と自民党政権は、有効求人倍率の上昇をよく自慢しています。
ほんとうにアベノミクスの成果だと言えるのでしょうか?
2つの統計からアベノミクスの成果とは言いがたいことをご説明します。
2つの統計は厚生労働省と総務省のホームページですぐ手に入ります。
(年平均) 有効求人倍率 新規求人倍率 政権
2009年 0.47 0.79 主に自公
2010年 0.52 0.89 民主
2011年 0.65 1.05 民主
2012年 0.80 1.28 主に民主
2013年 0.93 1.46 自公
2014年 1.09 1.66 自公
2015年 1.20 1.80 自公
*参照:厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000122520.html
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001152255
2009年9月に民主党政権が誕生したので、2009年は主に自公政権でした。2008年のリーマンショックを背景として、2009年4月に有効求人倍率と新規求人倍率が底を打ちました。
その後は有効求人倍率と新規求人倍率が上昇を続けています。ご覧のとおり民主党政権のもとでも有効求人倍率と新規求人倍率はゆるやかに上昇し、安倍政権になってからもそのトレンドが継続しています。
必ずしも民主党政権の手柄ではないかもしれませんが、有効求人倍率と新規求人倍率の上昇は民主党政権のころ始まっています。安倍政権ではなくて、別の誰かの政権であっても、そのトレンドは継続していた可能性が高いといえます。
しかし、雇用の動向を左右するのは、景気だけではありません。経済政策とは別の次元の話しですが、人口動態も雇用に大きな影響を与えます。
ところで、皆さんの同級生は何人いますか?
日本に同じ年齢の人が何人いるか、ご存じでしょうか?
あまり知られていない「年齢各歳別人口」という統計があります。
*参照:総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
たとえば、私(1973年生まれ、団塊ジュニア世代)の同年齢人口は202万人です。団塊ジュニア世代で18歳人口がピークだった年です。高校時代も私の学年だけ1クラス多かったように記憶しています。そのおかげで大学受験が、戦後いちばん大変だった学年です。「ロスト・ジェネレーション」とも呼ばれる世代です。
団塊世代のピークの同年齢人口が220万人です。いま1~2歳の赤ちゃんの同年齢人口は、102万人ほどです。少子化が進んでおり、団塊世代の孫の世代になると、1学年の人口は半分以下になっています。
引退して労働市場から退く65歳前後の同年齢人口が200万前後だとすると、新たに労働市場に参入する同年齢人口(例えば22歳)は120万人程度です。新卒採用される世代の人口よりも、引退する世代の人口がかなり多いです。退職者の補充のための新卒採用だけでも、かなりの人数が必要となり、人手不足になって当然です。少子高齢化が進む日本では、新規求人倍率が高めになるのも自然なことです。
景気という要素よりも、人口という要素の方が、労働市場に大きな影響を与えている可能性が高いです。アベノミクスとはほとんど無関係に、当面は有効求人倍率や新規求人倍率が高めに推移することになるでしょう。
結論:
1.有効求人倍率の上昇は、民主党政権のころ始まり、そのトレンドが安倍政権でも継続している。
2.退職する世代の同学年人口が200万人、新卒の同学年人口が120万人とすれば、新規求人倍率が高くなるのは当然である。
3.安倍政権の経済政策とは無関係に、人口構成を背景として新規求人倍率は高めに推移している。つまり現在の有効求人倍率と新規求人倍率が高いのは、アベノミクスの成果とはいえない。人口動態という、アベノミクス以外の要素が大きい。