英国労働党の5つの使命:日本なら?

英国労働党のメーリングリストに登録しているので、定期的にメールが届きます。党首のキア・スターマー氏の名前で「より良い英国のためのキア・スターマーの5つの使命(ミッション)」というメールが届きました。日本と比較するとおもしろかったので、ご紹介します。

1.G7でもっとも高い成長率を持続させる。

経済成長はどの国でも重要課題なので、これは理解しやすいです。英国の物価高はかなりひどいらしく、IMFは2023年の英国の経済成長率はマイナスになると予測しています。優先順位が高いのも当然です。

2.未来のために国民保健サービス(NHS)を健全にする。

英国では国民保健サービス(NHS)がいつも選挙の争点になります。英国国民はNHSを誇る一方で、待ち時間の長さや医療の質では不満があるのかもしれません。日本では健康保険はさほど選挙の争点にならず、医療制度に不満を持っている国民は多くないのかもしれません。なぜ英国の有権者はそこまでNHSを争点化するのか、私にとっては謎です。

3.街を安全にする。

日本では国政選挙の争点にはなりにくいですね。日本ではありえない優先順位です。いまだに日本は安全な国だし、刑法犯認知件数も近年は一貫して減少し続けています。ワイドショーなどのテレビで凶悪犯罪がくり返し報道されるので、凶悪犯罪が増えている印象があるかもしれませんが、やはり減っているか変わらないかです。暴動など日本では何十年も発生していません。日本でも戦前は米騒動とか日比谷焼き討ち事件などの暴動が起きていましたが、今では歴史上の出来事です。暴動を起こす日本人なんて今では想像もできません。

英国では暴動は起きるし、一般犯罪も多いし、治安の悪いエリアもあり、治安は有権者の関心事です。保守党のマニフェストには選挙公約に「警察官を〇〇〇人増やします」みたいな項目があります。労働党も保守党も治安を重視している点は共通しています。

4.すべての機会の不平等をなくす。

教育機会の均等や人種差別などの問題が深刻なことがうかがえます。日本でも所得格差が教育格差につながっている現状があり、「機会の不平等をなくす」というのは世界共通の課題だと思います。とくに英国の場合は、移民や移民をルーツに持つ国民が多く、現首相はインド系なのも時代の流れなのかもしれません。移民の子どもでも首相になれる英国はかなりの程度まで機会の平等が確立していると言えるかもしれませんが、それでも所得や人種による格差は大きいのでしょう。

5.英国をクリーン・エネルギー超大国にする。

英国の場合、再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電も「クリーン・エネルギー」のカテゴリーに入れているのだと思いますが、それでも「クリーン・エネルギー超大国をめざす」という姿勢は立派です。私は日本も「クリーン・エネルギー超大国」をめざすべきだと思います(もちろん原発抜きで)。

逆に何が書かれていないかも興味深いです。5つの使命には、防衛や外交が含まれていません。英国はウクライナにかなりの軍事援助を行っていますが、それでも5つの使命に軍事や外交は入っていません。

また少子化対策もありません。移民が多い英国は、まだしばらくは人口が増えます。防災も入っていませんが、日本の政治家なら防災は優先事項に入れたくなります。

もし岸田総理に「5つの使命は何ですか?」と尋ねたら、おそらく「防衛力強化」と「少子化対策」が入るのでしょう。残りの3つは私には予想できません。

日本と英国を比較してみただけでも、いろんな違いがあることを再認識しました。いろんな国の事例を見ながら、日本でも活用できそうな政策があればピックアップして政策提言していきたいと思います。