卒業のシーズンが終わって入学のシーズンですが、わが母校の国際基督教大学(ICU)の卒業式について書かせていただきます。ICUは、卒業式でSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)で活躍した学生を表彰しました。SEALDsといえば、全国的な安保法制反対運動の流れをつくった学生グループであることはご承知の通りです。
SEALDsのメンバーの栗栖由喜さんが卒業にあたって「Friends of ICU賞」を大学から授与されました。この賞は顕著な活躍が認められる学生や教職員に授与されるものです。授与理由もすばらしいです。
政治を考え行動する学生団体においてスピーチなどの活動を通して、民主主義のあり方や平和について訴え、それらを真剣に考える潮流を生み出すことに貢献したことが、民主主義、平和、人権を尊重する本学のリベラルアーツの理念を体現した。
わが母校ながらICUの態度は立派です。文部科学省ににらまれて補助金を削られるリスクも恐れず、あえてSEALDsの学生を表彰し、学生たちに平和や民主主義のために行動することの大切さを示しました。
リベラルアーツの理念こそ、いまの日本に求められていると思います。安倍政権下の文部科学省は、国立大学の文系学部や教員養成学部を削ろうとしています。リベラルアーツ(教養教育)を軽視し、目先の短期的な利益追求型の実学を強化しようという発想です。ある意味で安倍政権の判断は合理的です(「彼らの目的にとって合理的」という意味ですが)。リベラルアーツ教育を受けて健全な批判的精神を持つ市民が増えることは、安倍政権にとって脅威です。
日比谷潤子学長や北城恪太郎理事長(元日本IBM会長、元経済同友会代表幹事)のスピーチもすばらしいので、一部抜粋すると;
日比谷学長:
学びは卒業したら終わりではありません。むしろ本格的に始まるのは、社会に出てから、更に多く要求されるようになってからです。みなさんはここで自発的学修者として主体的に計画を立てつつ、創造的に学んでいく能力を身につけました。これからの進路はさまざまでしょうが、一人ひとり自分自身の力で道を切り拓き、責任ある地球市民としての道を歩んで行ってください。
北城理事長:
先のことが良く分らない社会においては、ICUの卒業生のように、幅広い分野を学んだうえで、専門分野を深め、何が正しいかを自分で批判的に考えることの出来る人材が求められています。
社会人として最も大切な能力は、学び続ける力です。人生は学び続けるものです。忙しくて学ぶ時間が無いという人は、2000年前の中国のことわざに、『忙しいと言って学ばない人は、暇があっても学ばない』と言われていることを思い出してください。
学長のおっしゃる「責任ある地球市民」というのは、いかにもICUらしい表現で、なつかしく感じます。お二人とも「学び続ける」ことの大切さを強調しています。私も大学卒業のころの初心に帰って学び続け、平和と民主主義を守りたいと思います。