私が執筆に関わった「持続可能な社会ビジョン」のご紹介の第2弾です。「税とは政治である」としばしば言われます。イギリスの議会制度の発達もアメリカ独立戦争もきっかけは税でした。
なお、立憲民主党の参院選公約のひとつの消費税減税については一切ふれておりません。「持続可能な社会ビジョン」委員会の有識者委員の皆さんは、だれ一人として消費税減税を提唱されませんでした。
公平な税制と再分配で格差と貧困の少ない社会へ
新自由主義的な経済政策や規制緩和が、非正規雇用の増加、実質賃金の低迷を招き、格差を拡大してきた。かつて「一億総中流」といわれた日本だが、中間層は薄くなり、貧困率は上がり、子どもの貧困も深刻な状況にある。格差が社会を分断し、一握りの富裕層がより豊かになる一方で、世代を超えた格差の連鎖が起き、格差社会が行きつく先は階級社会である。また格差が大きい社会ほどお互いへの信頼が低くなりがちで、支え合い助け合う社会を築くには格差を解消して信頼を高める必要がある。
格差社会は持続可能ではない。経済がどれだけ成長したかではなく、どれだけ子どもの貧困を削減できたか、あるいは、どれだけ困難な状況にある人たちの生活を改善できたかによって政策を評価すべきである。
中間層の再生は、持続可能な社会の前提である。分厚い中間層が健全な民主主義と市民社会の基盤であり、格差が固定化されず社会的流動性のある社会こそが持続可能な社会である。税制や社会保障制度を改め、貧困層を中間層へ引き上げ、病気や失業をきっかけに中間層から貧困層へ転落することを防ぐセーフティーネットを整備する。
かつて新自由主義的な経済政策を主導していたIMFでさえ、「所得再分配の強化こそが経済成長を促進する」と主張するようになった。「成長と分配の好循環」では、成長が分配に先行することとなり、裏を返せば「成長しない限りは分配できない」という理屈になりかねない。「分配が成長を促す」というのが、これからの経済の新しい常識である。OECDの報告書にもあるように、公正な税制と再分配による格差解消は経済成長にプラスであり、所得格差と資産格差の拡大は経済成長にマイナスである。
活力のある社会をつくり、経済を成長させるためにも税制の抜本改革が必要である。公平な税制をめざし、応能負担原則を強化する。公平な税制と公正な再分配政策により、「弱者を生まない」セーフティーネットへ転換する。
さらに考えなくてはいけないのは、現在の世代と未来の世代との公平性である。財政の持続可能性はもちろんのこと、地球環境の持続可能性を考えた税制や経済政策へ早急にシフトし、持続可能な資本主義を確立しなければならない。「市場の失敗」の最たる例である気候変動問題に対応した税制を実現する。