だいぶあいだが空いてしまいましたが、「世界のリベラル政党の政策」シリーズの第4弾で最終回はオーストラリア労働党です。もう十年以上も前ですが、オーストラリア労働党の党本部に行ったことがあります。
オーストラリア議会事務局の日本・オーストラリア議員交流プログラムで招待してもらい、連邦議会や州議会、連邦議員の地元事務所や政党本部等を訪問させてもらいました。
オーストラリア労働党本部に行って最初に浮かんだ素朴な疑問が「なぜオーストラリア労働党は労働を “Labor” とアメリカ英語で綴るのか?」という点でした。オーストラリア英語は基本的にイギリス英語のスペルを使うことが多いです。それなのにアメリカ英語式につづるのが不思議に思いました。
どうでもいいポイントですが、恐る恐る尋ねてみると、「オーストラリアの労働党はアメリカの労働運動の影響を受けているからだ」といった回答がありました。意外とアメリカとオーストラリアというのは人の行き来が多く、つながっていることを実感しました。
さて、そのオーストラリア労働党は、二大政党のひとつで130年の歴史を持ち、2008年から2013年まで政権を担っていました。環境問題にも熱心なリベラルな社会民主主義の政党といえます。イギリス労働党やニュージーランド労働党と似たような政策であるので、特徴的な点はそれほど多くないかもしれません。
興味深いのは核兵器禁止条約への対応です。オーストラリア労働党は、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を選挙公約のなかに掲げています。オーストラリアはアメリカの同盟国であり、ベトナム戦争や湾岸戦争など多くの「アメリカの戦争」につきあって出兵してきました。ある意味では自衛隊以上に密接に米軍と協力してきたのがオーストラリア軍です。
そのオーストラリアの労働党でさえ、政権交代を実現したら核兵器禁止条約に参加する方向に行くかもしれません。オーストラリアで政権交代が起きる可能性は、日本で政権交代が起きる可能性より高いかもしれません。そのオーストラリアが核兵器禁止条約に前向きになれば、国際社会の反応も変わるかもしれません。オーストラリア労働党には核軍縮推進の立場からもがんばってほしいと思います。
オーストラリア労働党の2021年の政策綱領(National Platform)を読んでみると、キーワードは「公平性(fairness)」と「より良い社会(create a better society)」でした。公平な分配や福祉の向上を重視している点も社会民主主義政党らしいところです。
イギリス労働党、ニュージーランド労働党、カナダ自由党、オーストラリア労働党と社会民主主義・リベラル政党の政策を見てきましたが、率直な感想は「けっこう似てるなぁ」というものです。
裏を返せば、いわば「リベラル政党の世界標準政策パッケージ」といえるようなものがあると感じます。ブログで書きませんでしたが、ドイツの社会民主党の基本政策も勉強してみました。
私のごくかんたんな個人的リサーチの結論でしかありませんが、いまの立憲民主党の政策パッケージもおおむね悪い内容ではないと思います。「リベラル政党の世界標準」から大きく外れる政策体系ではないと思います。
あえて1点あげるなら消費税減税は選挙公約に掲げない方がよかったかもしれません。一般的に世界のリベラル・社会民主主義の政党は、増税して再分配を強化することをめざします。
保守政党(新自由主義政党)が減税と福祉削減を主張し、リベラル政党(社会民主主義政党)が増税と福祉充実を主張するというのは、世界の二大政党でよく見られるパターンです。
そういう意味では立憲民主党が消費税減税を訴えたのは、「リベラル政党の世界標準政策パッケージ」からの逸脱といえるかもしれません。その点を除けば、十分に世界のリベラル政党と伍していけると思います。自信を持って良いと思います。
以上で「世界のリベラル政党の政策」シリーズは終わります。お読みいただいた皆さま、ありがとうございました。