毎日新聞1月26日配信の「立憲民主、参院選公約の土台作り開始『新しい資本主義』に対抗」という記事で、立憲民主党は夏の参院選の公約の土台となる「持続可能な社会ビジョン」を議論する委員会をスタートする旨が報道されています。
片山義博先元知事や井手英策教授などが委員に就任し、「分配による貧困・格差の解消で共生社会実現を目指すなど、独自構想を掲げて、岸田文雄首相が訴える『新しい資本主義』に対抗したい考え」だそうです。
立憲民主党のこういった試みは重要だと思います。奇をてらった選挙対策や根性論・精神論ではなく、めざすべき社会や経済、政治のビジョンを示すことこそ最重要の参院選対策だと思います。
政党支持率が下がったからといって浮足立ってウケ狙いの薄っぺらな公約を並べるのではなく、経済や社会の構造的な変化にあわせて骨太な「持続可能な社会ビジョン」を示すことが大切です。
新自由主義的な経済成長至上主義で広がった所得格差をどうするのか、気候変動問題を解決するために環境と経済をどうやって調和させるか、大量生産・大量消費・大量廃棄の世の中をどう変えるのか、財政のこれ以上の悪化をどう食い止めるのか、東アジアの平和をどうやって実現するか、そういった「大きなテーマ」を議論することが大切だと思います。
岸田総理の「新しい資本主義」には新しさはありません。「成長と分配の好循環」といいますが、言い換えれば「成長しなければ、分配できない」ということです。アベノミクスの「トリクルダウン(したたり落ちる)」と同じことをちがう言葉で表しただけです。
「トリクルダウン」は、成長して富裕層が豊かになれば、そのうち中間層や低所得層にも恩恵が「したたり落ちる」という経済政策でした。しかし、トリクルダウンは起きませんでした。むしろ所得格差・資産格差は拡大しました。
必要なのは「成長しても、成長しなくても、分配を重視する」政策です。「成長と分配の好循環」だと、経済が成長しない限り、分配できません。まず分配を重視するのが、立憲民主党の立ち位置であるべきで、それが岸田政権の政策との差別化ポイントです。
政府の「新しい資本主義実現会議」のサイトを見てみると、「10兆円の大学ファンド」とか、「スタートアップの支援」とか、「経済安全保障」とか、これまで安倍・菅政権で議論してきたことがそのままテーマになっていました。ちっとも「新しい資本主義」ではありません。単なるアベノミクスの焼き直し、新自由主義の化粧直しに過ぎません。
また、気候変動の問題は待ったなしです。立憲民主党は若い世代の支持で自民党に負けていますが、「だからネット戦略を強化すべきだ」みたいな短絡的な発想では、段違いに資金力のある自民党にはかないません。むしろSDGsを前面に打ち出して、気候変動問題で未来の世代にツケを回さない政策を掲げ、自民党との違いを打ち出すべきです。
夏の参議院選挙に向けた動きとしては「持続可能な社会ビジョン創造委員会」はきわめてまっとうな選挙対策だと思います。政治理念や社会ビジョンで他党との差別化をはかってほしいと思います。勝負すべきは「大きなテーマ」です。