昨日(10月11日)の衆議院本会議での枝野幸男代表の代表質問は、立憲民主党の選挙公約につながる内容でした。35分間の長い代表質問をぜんぶ見た人は少ないと思いますので、私が個人的に思い入れのあるポイントをかいつまんで解説させていただきます。
岸田総理は「成長と分配の好循環」と訴えますが、枝野代表は次のように指摘します。
適正な分配が機能せず、将来不安が広がることと相まって成長を阻害していることが最大の問題なのに、成長の果実を分配するのでは、いつになっても好循環は進みません。好循環の出発点は適正な分配にあると考えますが、いかがですか?
立憲民主党は「分配なくして成長なし」と訴えています。岸田総理の「成長と分配の好循環」と一見似ていますが、順番とプロセスが異なります。
自由民主党: 成長 ⇒ 分配
立憲民主党: 分配 ⇒ 成長
自民党の場合は、経済が成長してはじめて分配が増えます。経済が成長しない限りは、分配は増えません。
これだけ長期にわたる経済の低迷が続き、「失われた20年」がまもなく「失われた30年」になろうとする中では、いつまでたっても成長しないので、分配(所得)は増えません。
立憲民主党は、むしろ分配(所得)を増やすことが消費を活性化し、経済を成長させるという考え方に立ちます。
過去20年ほどの労働規制の緩和により、非正規雇用が大幅に増えて、労働分配率が下がっています。分配が減るので、消費が活性化せず、さらに景気が冷え込む、という悪循環(デフレスパイラル)が続いてきました。
このように「成長と分配の好循環」と「分配なくして成長なし」では、一見すると似てますが、方向性が大きく異なります。
アベノミクスでも「成長と分配の好循環」と言ってましたが、アベノミクスの期間中に実質賃金は下がっています。「分配なくして成長なし」を試みるべきタイミングです。
大学教育に関しては、けっこう私の意見が取り入れられている気がします。大学関係者の皆さんにはご理解いただけると思いますが、枝野代表は次のように述べました。
地方国公立大学の機能を強化します。基礎研究を重視し、ポスドクや大学院生の処遇改善、女性研究者比率の引き上げ等に配慮しながら、公的助成を拡充し、中長期的な視点に立った研究・開発力を強化します。国立大学への運営交付金を増額し、大学財政を健全化します。
これまで国立大学の運営交付金を削減してきたので、大学では非正規教員の割合が大幅に増えました。期限付き任用の教員や研究者が増えて、安心して研究や教育に打ち込めない環境になってしまっています。
競争的な研究助成ばかりだと、独創的な研究や純粋な好奇心に基づく研究ができなくなります。大学の自治や学問の自由を守るためには、自由度の高い予算を確保することが重要です。
大学関係者が文部科学省の顔色ばかりうかがうようになったのは、運営交付金削減の影響も大きいと思います。日本学術会議の任命問題でも明らかになったように、政府が学問の世界の人事にも口を出す時代です。政府が予算と人事をコントロールして、大学の自治や学問の自由が損なわれない工夫が必要です。
枝野代表は、「原発に依存しないカーボンニュートラル」や「自然エネルギー立国」を強調しつつ、私が提案した住宅等の断熱化・省エネ化についても言及しています。
脱炭素社会に向けて、省エネ機器の普及や熱の有効利用など、エネルギー活用効率の最大化を進めます。特に、新築住宅の断熱化を義務付け、既存建築物を断熱化するための大胆な補助制度を創設するとともに、公営住宅の早急かつ計画的な断熱化を実現します。
地味な政策ですが、私にとっては思い入れのある政策です。アメリカのグリーン・ニューディール政策でも、自然エネルギーの普及と並んで、建物の断熱化・省エネ化が政策の柱のひとつです。住宅政策については次のように述べます。
貧困格差の広がりに、コロナ禍が追い打ちをかけ、住むところを確保できない方が少なくありません。持ち家偏重の住宅政策を改め、「借りて住む」というライフスタイルも、同様に重視し、低所得世帯を対象に家賃を補助する、公的な住宅手当を創設します。空き家を、国の支援の下で自治体等が借り上げる「みなし公営住宅」を整備します。持ち家政策に偏重してきた住宅政策を転換するつもりはないかお伺いします。
低所得世帯向けの「住宅手当」もこれからはベーシックサービスの一部です。他の先進国にはあって、日本にはなかった「住宅手当」は、再分配政策としても、住環境改善策としても有効です。
立憲民主党の選挙公約の柱は、分配政策の拡充、ベーシックサービス(医療、介護、障がい者福祉、教育、保育等)の充実、自然エネルギー立国と原発ゼロといった政策になると思います。まもなく正式発表の予定です。