本日(6月3日)立憲民主党のジェンダー平等推進本部長代行の徳永エリ参議院議員、同事務局長の打越さく良参議院議員、総務部会事務局長の岸まき子参議院議員といっしょに総務省に申し入れに行きました。実際には武田総務大臣ではなく、宮路総務大臣政務官に申入書を手交し、口頭で説明および要請を行いました。
DV被害者団体やその支援をしている弁護士の先生からの提案・要請に基づいて、総務省への申入書をつくり、党内手続きをへて正式に総務省に申し入れたものです。これは、DV等の被害者支援措置として住民基本台帳の閲覧制限に関し、不備な点を改善し、地方自治体職員等の研修やマニュアル整備を要請するものです。こう書くと何が何だかわかりにくいと思います(すぐわかるのは当事者の皆さんだけだと思います)。
具体的にはこんな例です。DV被害に遭って離婚した女性とそのお子さんがいるとします。DV加害者である元配偶者(元夫)から身を隠している女性は、元夫に住所を知られたくありません。警察と相談した上で、市役所の窓口にお願いして、住所などを元夫が閲覧できないように措置することが可能です。
しかし、その手続きはたいへんですし、毎年更新しなくてはいけません。更新のたびに窓口の職員にプライバシーに関わる理由を説明することを強いられ、精神的な負担も大きいです。また市役所の窓口職員のうっかりミスや誤解で、元夫に住所を知らせてしまった例もありました。
そういうミスは命に関わる可能性もあるし、DV被害者の女性やお子さんにとっては恐怖です。そういうミスや手続き漏れが起きないように、総務省に善処をお願いする申し入れでした。基本的に総務省や法務省の担当者はDV被害者を守るためにとても真摯に対応してくれます。しかし、ルールや手続きに関しては、改善の余地があります。以下、申入書の内容を転記します。
総務大臣 武田 良太 様
DV等支援措置としての住民基本台帳閲覧制限等の期間制限の削除等を求める申入書
立憲民主党
コロナ禍においてDVの相談件数は、昨年4~12月の総数で約147,000件にのぼり、過去最多となりました。特に5、6月の各件数は前年同月に比べそれぞれ約1.6倍に増加しました。DV被害の実態を踏まえ、DV被害者保護のため、以下について政府に速やかな対応を求めます。
記
(要望事項)
一、住民基本台帳事務処理要領に基づきDV等被害者に対する支援措置として行われている住民基本台帳の閲覧制限等について、「支援措置の期間」を制限する部分(同要領第5-10-カ)を削除するとともに、関係部分(同要領第5-10-キからケまで)を削除・改正すること。
二、DV等被害者の住所情報の漏えいを防止するため、自治体が必要な措置を講ずるための支援を行うとともに、自治体情報システムの標準化に当たっては、全ての標準化基準において、DV等被害者の住所情報の漏えいを防止するための必要な措置を定めること。
(要望の理由)
1 要望事項1について
住民基本台帳法は、一定の条件のもとに、本人以外の者が住民基本台帳の一部の写しを閲覧し、住民票の写し及び戸籍の附票の写し等(以下「住民票の写し等」)の交付を受けることを認めている。
他方で、DV加害者が、被害から逃れるため転居したDV被害者の住所情報を取得し、危害を加える例がある。住民基本台帳事務処理要領(以下「要領」)は、DV、ストーカー行為等、児童虐待等の被害者の支援措置として、住民基本台帳の一部の写しの閲覧申出拒否(以下「閲覧制限」)・住民票の写し等の交付拒否の仕組みを定めている。この仕組みのもとでは、加害者が債権の回収・債務の履行・訴訟手続・相続手続などのために被害者の住所を知る必要がある場合は、住民票の写し等を交付する必要がある機関等から交付請求を受けるなどの方法により、加害者に住民票の写し等を交付せずに目的を達成すべきこととされている。
問題は、要領が、支援措置の期間を1年と制限している点である(第5-10-カ)。この期間制限により、被害者が期間を延長する手続(第5-10-キ)をとらなければ支援措置が終了する(第5-10-ク-B)。被害者にとっては1年ごとに役所等へ赴いて手続をとらなければならないことは精神的にも負担であり、コロナ禍で移動が制約される状況で更に負担が増大していると考えられる。
1年の期間制限を定めている根拠については、「被害の状況がケースごとにさまざまに変化し得る」「支援措置は特例的な扱いであるから、一定の期間を区切って状況等を確認することが大切」である旨の説明がなされている。
しかし、例えばDVは、社会の性差別構造に由来する力の格差のもとで生じる構造的な問題であって、1年以内に問題が解消されるような性質のものではなく、むしろ特段の事情のない限り問題が継続すると扱うべき性質のものと考えられる。ストーカー・児童虐待等についても、同様に、構造的な問題があるといえる。このような事情にもかかわらず、支援措置の期間を1年とし、1年ごとの延長手続を被害者に求めることは、充分な根拠なく被害者に手続的負担を強いるものと言わざるを得ない。「被害の状況がケースごとに変化し得る」ことは、被害者からの終了申出により適切に反映され得ると考えられる。
よって、要領に基づきDV等被害者に対する支援措置として行われている住民基本台帳の閲覧制限・住民票の写し等の交付拒否について、期間を制限する部分(要領第5-10-カ)を削除するとともに、関係部分(要領第5-10-キからケまで)を削除・改正するよう求めるものである。
2.要望事項2について
支援措置の対象とされているDV等被害者(2019年時点で13万7,796人)の住所情報が加害者へ伝えられてしまう「住所情報の漏えい」が起きている。その原因は、自治体担当者の理解不足やミス、自治体部局間や自治体間の連携不足等である。こうした漏えいは、DV等被害者の生命・身体の安全が侵害されることにつながりかねないものであり、総務省は事務の適正な執行を徹底するよう通知しているが、抜本的な解決には至っていない。
国は、通知を発出するのみならず、以下のような自治体への支援を行うべきである。
(1)研修・マニュアル整備への支援
人為ミスを防止するため、新任担当者への研修の充実、マニュアル整備について、自治体に不足するノウハウを支援すること。
(2)連携強化への支援
DV等支援措置の対象となるのは、住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票の写し、戸籍の附票の写し等に限られているが、住所情報漏えい事案は、税務、社会保障、子ども・子育てなどの様々な分野で発生している。そこで、これらの業務での住所情報漏えいを防止するため、DV等支援措置担当部局との連携が必要となる部局・業務について例示すること。
(3)情報システムでの対応への支援
自治体情報システムの標準化に当たっては、国が定める全ての標準化基準(標準仕様書)において、支援対象者の住所情報が含まれる証明書等は、権限のある職員がエラーを解除しない限り交付できないようにするなど、人為ミスが起こりにくい情報システムの整備を支援すること。
以上のとおり、DV等被害者の住所情報の漏えいを防止するため、自治体が必要な措置を講ずるための支援を行うとともに、自治体情報システムの標準化に当たっては、全ての標準化基準において、DV等被害者の住所情報の漏えいを防止するための必要な措置を定めることを求める。