最近の枝野代表は「自然エネルギー立国」を政策の柱に掲げています。自然エネルギー(再生可能エネルギー)が、脱炭素化(=地球温暖化防止)、経済と雇用の回復のカギになるのは間違いありません。
まずは足元の福岡県の自然エネルギーについて学ぼうと、地元の川崎県議に手配していただき、みやま市の自然エネルギー施設の見学に行きました。とても感銘を受けたので、ご報告させていただきます。
みやま市にある「みやまスマートエネルギー」は、2011年福島第一原発事故以後に小規模・地域分散型のエネルギーシステムに取りくむ、いわゆる「ご当地エネルギー」のさきがけとして知られています。ちなみに、わが地元事務所も「みやまスマートエネルギー」から電気を買っています。
エネルギーの地産地消に取りくむ「みやまスマートエネルギー」は日本初の自治体による電力売買事業会社です。民主党政権時にできたFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用し、市と地銀と市民や市内事業者が出資して、高圧電線のために利用できずに困っていた市有地に5000kWメガソーラー施設を設置しました。
地方自治体を中心に市民や地域の事業者が参加して地産地消エネルギーを生み出す取りくみとしては、ドイツの「シュタットベルケ(都市公社)」が有名です。みやまスマートエネルギーは「日本版シュタットベルケ」と称され、成功モデルとして紹介されています。
みやまスマートエネルギーは、収益を上げて出資者に還元し、地域に雇用を生み出し、自然エネルギーの発電で脱炭素化に貢献しています。一石三鳥の効果です。
みやま市(人口3万8千人)の年間の電気料金は47億5千万円だそうです。外部の電力会社から電気を買えば、そのお金は域外に流失します。しかし、地域で電気をつくれば、お金が地域のなかで循環します。地域活性化に役立ちます。
みやま市の自然エネルギーはそれだけではありません。バイオマスセンターもすごいです。みやまスマートエネルギーは既に有名ですが、こちらの方はまだあまり知られていないかもしれません。
みやま市のバイオマスセンターは廃校になった小学校を活用し、2016年にスタートしました。一日当たり、生ごみ10トン、し尿42トン、浄化槽汚泥78トンの合計130トンを処理しています。生ごみ等を処理してメタンガスを発生させてコジェネ発電を行うとともに、発酵後の液体から「液肥」ができ、地域の農家がコメ、麦、ナス、菜種等の栽培に活用しています。
生ごみの分別は地域住民にとっては負担ですが、市役所職員の皆さんの丁寧な説明と啓発活動のおかげで住民が積極的に協力しています。住民参加なくしては成功しない事業です。
生ごみから出るメタンの温暖化効果は、CO2の温暖化効果の25倍です。メタンを空気中の出さないことが重要なので、メタンを燃やして発電に使う点も大きな長所です。バイオマス発電は多少コストがかかっても、温室効果ガスを減らせることを考えれば、十分に割に合うと思います。
バイオマスセンターで生ごみを仕分けるのは、たいへんな仕事で労働集約的ですが、障がい者の方々の雇用につながっています。雇用の創出、それも障がい者の雇用を創出できる点もポイントが高いと思います。
さらに生ごみを分別すると焼却ゴミが3~4割も削減できます。ゴミ焼却コストを大幅に減らせることもメリットです。ゴミ焼却にかかる予算の削減効果だけでもかなりの金額です。
バイオマスセンターで出る液肥は無料です。農家にとっては肥料を購入するコストを抑えられます。液肥を使った野菜や果物は食味も良いそうです。当然ながら液肥は有機肥料ですから、「有機栽培」という付加価値をつけてマーケットに出せます。
さらにバイオマスセンターは、校舎を活用して地域交流拠点になるカフェやシェアオフィス、食品加工場も併設しています。地域住民も観光客も気軽に立ち寄れる施設になっており、地域振興に役立っています。
たくさんメリットがあるので、整理しておさらいすると、(1)バイオマス発電でメタンガスの排出抑制(地球温暖化対策)、(2)ごみ焼却コスト低減で歳出削減、(3)雇用(特に障がい者の雇用)の創出、(4)農家の所得向上(肥料購入費の削減、有機栽培の高付加価値化)、(5)地域の交流拠点。
以上のメリットがあり、一石五鳥のプロジェクトです。技術的にはすでに確立しています。あとはやる気の問題です。国は、助成を増やしたり、こういう事例を積極的に広報して全国に普及させるべきです。
気候変動対策は、いつ起きるかわからないイノベーションを待つより、みやま市のバイオマスセンターのように既にある技術と仕組みを面的に広げていくことの方が重要だと思います。みやま市の2つの事例はぜひ全国に広げたいものです。枝野代表にも視察に来てほしいと思っています。