昨日(3月2日)、党の気候危機対策調査会で東京大学の高村ゆかり教授に「気候危機をめぐる国際動向」をテーマにご講演していただきました。いちばん驚いたのは、最先端の企業は「カーボン・ニュートラル」とか「ゼロ・カーボン」を通り越して「カーボン・ネガティブ」をめざしているという点です。
環境省の定義によれば、「カーボン・ニュートラル」とは;
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガス排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態をいう。
ということです。役所らしい、長ったらしく、わかりにくい文章です。なんと途中の句点「。」がひとつしかなく、受験生が小論文試験で書いたら間違いなく落第しそうな文章です。少し補足説明が必要です。
「カーボン・ニュートラル」の実現のため、まずは省エネなどの方法で温室効果ガスの排出を削減します。それでもどうしても削減できない部分は、他の場所で温室効果ガスの「削減・吸収のための活動」を行います。
「削減・吸収のための活動」とは、具体的には植林や森林管理の改善により二酸化炭素の吸収を促す活動がその一例です。あるいは、他の場所で、バイオマス・風力・水力・太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用や高効率省エネ機器の導入を進めて温室効果ガスを削減します
まぁ「カーボン・ニュートラル」までは私も知っていたし、何となく理解できる範囲内です。しかし、「カーボン・ネガティブ」まで行くと予想外でした。そこまでやろうとがんばっているのがマイクロソフトです。さすがです。
マイクロソフトは、2030年までに炭素排出をマイナスにすることをめざしています。さらに2050年までに創業以来排出したすべての炭素を環境中から取り除くことまで目標にしています。そのために10億ドルの「気候イノベーション基金」を設けています。
「カーボン・ネガティブ」のためには、製造プロセスの見直しでは十分ではなく、下請け企業や取引先を含めてサプライチェーン全体の見直しが必要になります。そしておそらく植林や再生可能エネルギー普及など、本業以外でもかなり力を入れることになるのだと思います。
どういう道筋で「カーボン・ネガティブ」を実現するのかは正直わかりませんが、排出権取引のほかに、相当なイノベーションと資金が必要になるでしょう。マイクロソフトのすごみであり、強さだと思います。
日本企業もがんばって世界をリードしてほしいものです。特に日本政府が後ろ向きなだけに、日本の企業とNPOにはがんばってほしいと思います。環境省を弁護すると、環境省の担当者の皆さんはがんばっているけれど、経産省のカベに阻まれてきた歴史があります。経産官僚が牛耳る安倍政権では、環境政策は前に進みません。環境政策を変えるためにも政治を変えなくてはいけません。