統一地方選の前半戦も残すところ数日です。立憲民主党の新人候補のなかには私のブログを読んでくれている方もいるでしょう。そういう新人候補の方のために「勝つ候補者の条件」を考えてみました。
私の選挙経験は5回です。そんなに選挙に強いわけでもありません。ぶっちぎりで当選したこともありません。4回当選して1回落選。小選挙区でギリギリで勝ったことも、小選挙区で負けて比例復活したことも、純粋比例で当選したことも、落選したこともあります。選挙区をかわった経験もあり、他の候補者の選対本部長を務めたこともあり、それなりにいろんな選挙を見てきました。
そんな自分の経験に照らしてみると、何となく「勝つ候補者」の共通点みたいなものがあるように思います。統計的に有意なほど多数のケースを見てきたわけではないので、単なる肌感覚ですが、何となく「法則」みたいなものはあると思います。いくつか挙げてみました。
勝つ候補者は明るい。
ある意味あたり前かもしれません。「勝てそうだから明るい」ケースもあるでしょうが、「明るいから勝つ」というケースも多いと思います。明るい候補者だと選挙事務所の雰囲気も明るくなります。逆に、候補者がネガティブな発言ばかりしていたら、まわりもネガティブになります。熱意、あるいは、熱意のなさは伝染します。候補者がポジティブでなければ、なかなか勝てません。
自分の言葉を持っている候補者は強い。
自らの経験や知識に根ざした言葉を語れば、演説に説得力が出ます。経験に基づく具体的な政策を自信をもって語ることができる候補者は強いです。単に議員になりたいだけの人は「政治屋」で、そういう人には自分の言葉がありません。「こういう問題で苦しんでいる人たちを何とかしたい」とか、「こういう課題を解決したい」とか、具体的に語ることができるテーマのある人だけが議員になる資格があると思います。だれでも言えるフワッとした抽象論しか語れない候補者はダメです。具体策のない候補者は、そもそも選挙に出てはいけません。
すなおに人の意見や助言に耳を傾ける候補者は強い。
新人なのに我が強くて人の意見に耳を傾けない候補者は弱いです。選挙運動は基本的にボランティアが支えます。運動員や後援会のボランティアの人たちが好意で助言してくれても、候補者が耳をかさなければ、ボランティアの人たちは離れていくでしょう。
ピーター・ドラッカーは企業経営だけではなく、NPOマネジメントでも有名ですが、ドラッカーは「NPOマネジメントの方が企業のマネジメントよりも難しい」と言います。NPOはボランティアの労働や善意の寄付に依存する部分が多いわけです。ボランティアは、給料や人事権では動かせません。ボランティアは気にいらないことがあれば、働き続けるインセンティブはありません。あるNPOが気にいらなければ、別のNPOに移ってボランティアすればよいだけです。他方、給料をもらっている従業員は、多少嫌なことがあっても、がまんして働き続けます。ボランティアのマネジメントの方が、より難しいという理由はおわかりいただけると思います。
ボランティアに気持ちよく働いてもらうことが重要なのは、NPO活動も選挙運動も同じです。選挙ボランティアに気持ちよく働いてもらうためには、選挙の大義(公約)に共感してもらうことと、候補者が魅力的であることが重要です。好意で働いてくれているボランティアの人たちの意見や助言に耳をかさない候補者では、選挙運動は盛り上がりません。
「この候補者のためにがんばろう」と思ってもらうためには、候補者がすなおに周囲の言うことを聞き、謙虚な姿勢でいることが大切です。特に新人のうちはわからないことばかりです。経験者や周囲の人の言うことに謙虚に耳を傾けましょう。
政策に強い候補者は選挙にも強い。
あたり前だと思うかもしれませんが、政策をろくに勉強せずに立候補する人も意外といます。選挙戦の真っ最中に政策を勉強するわけにもいきませんが、事前にきちんと政策を学んでないと、選挙公報やチラシにまともな選挙公約を書けません。人に頼んで公約を考えてもらうこともできるかもしれませんが、公開討論会などに出ていくと付け焼き刃の知識だと痛い目にあいます。
政策に強いだけでは選挙には勝てませんが、少なくとも政策知識がないよりはあった方が勝率は高くなると思います。行政マンや市民運動家は、意外と細かいところまで選挙公報やビラを見ています。政策の細かいところまで見ている人は少ないかもしれませんが、ほんの数十票や数百票で当落が分かれる地方選では、細かいところもおろそかにしない方がよいでしょう。
議員にとっては、市民の感覚や市民の目線は大切ですが、平均的な市民と同じレベルの政策知識では困ります。給料をもらって議員として活動するのであれば、プロフェッショナルとして恥ずかしくない政策知識が求められます。プロの議会人として通用する資質は候補者に求められるので、ある程度の政策知識のある候補者でないと困ります。
自らを差別化できる候補者は強い。
たとえば「明るい未来のためにがんばります」とか、「市政を改革します」とか、「少子化対策に取り組みます」とか、誰でも言えそうな選挙公約では差別化できません。どの政党に所属しているかも判断できません。所属政党のカラーを出して、他党(特に自民党)と差別化することが大切です。たとえば、原発政策では、自民党候補者と差別化するのも容易です。夫婦別姓とか、法人税の累進性アップや金融課税の強化なども、自民党の候補者は言えないでしょう。経済界(経営者)寄りの自民党への対抗軸という観点では、労働者の側に立った政策を前面に打ち出すのも効果的だと思います。どの政党に所属しているのかわからないような公約ばかり並べる候補者はダメです。立憲民主党の新人候補なら党の綱領や基本政策をよく読み、場合によっては自民党の公約なども分析した上で、自らを差別化する方法を考えるとよいと思います。
以上の5つの条件を満たしていれば、かなりの確率で当選できることでしょう(?)。まっとうな政治でまっとうな社会をつくるため、立憲民主党の新人候補の皆さんにがんばってほしいと思います。