先日、教員OB/OGと現職教員の皆さんの勉強会に講師として呼んでいただきました。1時間の講演と30分の質疑応答という構成でしたが、問題意識が高い人ばかりで真剣な質問と意見を聴くことができて、とても有意義な会でした。
政治家としていろんな形で、有権者に主張を訴えたり、意見交換したり、提案をお聴きしたりします。たとえば、(1)対話型のミーティングやワークショップ、(2)講演や講義、演説会、(3)街頭演説、が代表的なものでしょうか。こういった様々な有権者との関わり方のなかでも、やはり得意不得意はあります。
私が自分で好き(得意)だと思っている順に並べると、(1)対話型、(2)講演・講義型、(3)街頭演説型、です。もう13年以上も政治家をやっているのに、いまだに街頭演説の苦手意識は消えません。他方、対話型の会合は、慣れてきたこともあり、少し得意になりました。講演や学校での講義は、その中間くらいで苦手意識もないけれど、得意という意識もありません。
先日の教育関係者の会合は、最初に講演して、その後は対話型ということで、やりやすいパターンです。しかも熱心に聴いて下さる方が相手だと、とても話しやすいです。さらに教育政策という自分がもっとも興味のあるテーマを教育関係者にお話しできるというのは、もっともやりやすいパターンです。最初に講演をして、その内容への質問や意見などを投げかけていただき、さらに答える、という流れでした。
問題意識が高い人の質問や意見に答えるのは、知的な真剣勝負です。日頃から幅広く政策について勉強し、いろんな政策課題について自分なりの意見を持っていないと、対話型ミーティングで立ち往生していまいます。付け焼き刃の知識では、考えや知識の浅さがすぐに相手にばれます。日頃の努力の成果がいちばん表に出やすいのが、対話型のミーティングだと思います。
街頭演説や講義であれば、話す内容を事前に用意しておけば、表面的な理解でも相手をある程度は納得させられます。すぐれたスピーチライターがいれば、あとは演技力の勝負です。一方通行の街頭演説や講義であれば、得意なテーマだけ話せばよいので、得意分野に持ち込めば楽です。他方、どんな質問や意見が出てくるかわからない対話型ミーティングでは、頭の中に入っている知識をもとに即興で答えなくてはいけないので、「政策力」の差が表に出やすいです。
対話型のミーティングだと、参加者の反応が直接伝わってきます。こちらの話がおもしろくなければ、聴衆の表情や言葉ですぐわかります。他方、こちらの話を真剣に聴いてくれて、真剣に受け取ってもらっている場合もすぐわかります。また、対話型のミーティングで、参加者の意見にヒントをもらったり、参加者が自分と同じ考えを共有してくれているのがわかったりすると、うれしくなります。
その点で学校で講義をする時などは、反応がわかりにくくてむずかしいです。何人も居眠りしている生徒がいたら、「アッ、失敗した」とすぐわかりますが、そういう例は少ないです。むしろ多いのは、まじめに黙って講義を聴いてくれているけれど、関心を持ってくれているのか、単に礼儀正しく座っているだけなのか、見た目だけではわからないケースです。あとで感想文を書かせてみると、よく理解してくれていることが確認できることもあります。進学校のまじめな生徒ほど品が良くて反応が薄く、心配になります。しかし、あとで感想文を読むとこちらが伝えたいメッセージはちゃんと伝わっていることが多いです。
他方、街頭演説はむずかしいです。支援者が大勢集まっているケースではやりやすいし、反応も良くて気分も乗ります。しかし、動員をかけず、告知もせずに、街頭演説をやると、道行く人の反応があまりないことも多く、やりにくいです。たまに応援の声をかけてくれる人がいるとやりやすいのですが、黙って通り過ぎる人波を見ながら街頭演説するには精神的なタフさが求められます。政治家の中には街頭演説が得意で好きな人も多いですが、私はその域まで達していません。街頭演説が得意な政治家を尊敬します。
以前の小選挙区では毎朝のように90分間の街頭演説をしていて、これまで少なくとも千回以上は街頭演説をしているはずですが、そんなに上達した気がしません。ちなみに福岡3区の駅は構造的に街頭演説がやりにくい駅が多く(駅前ロータリーがない駅が大半)、街頭演説よりもビラ配りを中心に活動しています。ほぼ毎朝通勤時間帯に駅前で街頭演説をしていた頃にくらべると、最近は街頭演説への苦手意識が高まってきている気がします。しかし、来年春の統一地方選に向け、街頭演説をする機会が増えます。苦手意識を克服できるよう、日々精進していきたいと思います。