2018年9月10日、立憲民主党は「政策コミュニケーションユニット」の設置を決めました。といっても「政策コミュニケーション」という言葉自体がまったく知られていないため、何のことかサッパリわからなくて当然です。この場をお借りして提唱者である私から「政策コミュニケーション」についてご説明させていただきます。
1.政策コミュニケーションのめざすもの
現実の政治においては、「よい政策」を訴えれば有権者に理解され、選挙に勝てるとは限りません。トランプ現象や英国のEU離脱などの事例をみても、冷静な政策論争よりも、排外的ナショナリズムや情緒的なワンフレーズが政治を動かす例は枚挙にいとまがありません。
それに対し、同じようにワンフレーズ・ポリティックスで対抗すれば、政治不信を深め、さらに社会の分断を深めてしまいます。世界に広がる民主主義の危機を乗り越え、まっとうな政治を取り戻すための新たな試みが求められます。その試みのひとつが「政策コミュニケーション」です。
まず「よい政策」を立案することが大前提です。しかし、それを国民に理解してもらって選挙に勝つことなしには、「よい政策」も実現できません。国民の理解を得るには、説得力のある政策をわかりやすく「発信」する必要があります。むずかしい政策をむずかしい言葉で語っても、報道されないし、専門家以外には伝わりません。「わかりやすさ」と「正確さ」を両立しつつ、政策情報を発信する工夫が必要です。ホームページやSNSを使った直接的な情報発信も重要ですが、多くの国民が政策情報に触れるのはマスコミ報道であり、報道関係者に向けて政策情報を詳しく丁寧に説明していくことも大切です。
また、立憲民主党は政策形成における市民参加のプロセスを重視します。「ボトムアップの政治」を実現するため、草の根の市民の声、さまざまな分野の専門家の意見を広く聴き、選挙公約や議員提出法案に反映させるメカニズムが必要です。そのために政策情報の「受信」機能も必要です。各分野の専門家とのネットワークを形成し、その分野の最新の知見を吸収し、立憲民主党の政策に対する評価を聞き、政策づくりにいかしていくことも「政策コミュニケーション」のプロセスの不可欠な一部です。
2.政策コミュニケーションユニットの役割
政策情報をマスコミ関係者や国民向けにわかりやすく「発信」し、同時に、草の根の政策情報を積極的に「受信」し、市民参加の「熟議の政治」を実現することが、「政策コミュニケーションユニット」の役割です。立憲民主党と市民や専門家をつなぐ仲介者(インターミディアリー)として、双方向の「政策コミュニケーション」を担うのが「政策コミュニケーションユニット」です。立憲民主党がめざす「政策コミュニケーション」は、国民の政治不信を解消し、民主主義への信頼を回復する手段のひとつです。
ちなみに大事なポイントですが、「政策コミュニケーションユニット」を提案し、かつ、担当議員になったのは私です。構想自体はずっと前からあたためてきましたが、今年春ごろから政調会長代理の逢坂誠二衆議院議員や事務局スタッフ他で議論をはじめました。逢坂さんや事務局と相談しながら、私が企画書を何度も書き直し、党幹部に根回しし、党の機関決定でやっと設立が決まりました。
当面は逢坂さんと私の2人の衆議院議員と党職員他で「政策コミュニケーションユニット」を形成し、活動をスタートします。自分で部署の設置を提案し、自分でペーパーワークと根回しをやり、自分で担当者になり、ということで、自分で道を切りひらかなくてはなりません。小さくはじめて、大きく育てるつもりでがんばります。排他的なポピュリズム政治からの脱却と民主主義の再生につながる「政策コミュニケーション」をめざします。
そして「政策コミュニケーションユニット」の具体的な活動としては、①立憲民主党に「パートナーズ」として登録していただいた方を対象とした政策アンケートの実施、②学者やNPOなどの政策提言や研究成果を政策に反映させるためのネットワークづくり、③党の政策を報道関係者向けに解説する説明会の開催などから着手していきたいと思っています。
「政策コミュニケーションユニット」という党内ベンチャーの創業者として全力で取りくみます。国対の仕事は次から次にふってくる案件を手当たり次第に処理する感じでした。辻元委員長の指示にしたがい、各方面と調整し、「やるべきこと」がだいたいルーティーン化されているので、忙しいけれど「やるべきこと」が明確で迷う必要がありませんでした。辻元さんの指示に従うのは大変ですが、それでも指示があるので迷う必要はありません。
しかし、「政策コミュニケーションユニット」の仕事は、自分でゼロからデザインし、予算やスタッフを確保し、やるべきことを自分で考えなくてはいけません。だれも指示してくれるわけでもなく、自分で自分の仕事を創り出し、自分で目標を設定し、その成否の責任はすべて引き受けなくてはいけません。失敗しても成功しても全部自分の責任です。なんかNGOスタッフ時代の感覚を思い出します。緊張しつつもワクワクしています。がんばらなくては。