国会対策委員長代理になった私の仕事ですが、いちばん大変な時期は国会の開始直前です。昨日のニュースでも「国会の会期末が12月9日に決まった」ということが報道されていましたが、この「会期末決め」が政治的にはとても重要です。
国会の召集日を決めるのは内閣です。つまり「始まる日」は内閣が決めますが、「終わる日」は国会で決めます。国会には与党と野党がいるわけで、与野党の話し合いで「終わる日」を決めます。
なぜ「終わる日」が重要かといえば、与党と野党で事情が異なります。
政府・与党側の事情
1. 森友・加計学園の問題を予算委員会や文部科学委員会で追及されるのはいやだ。だから国会の会期は短い方がよい。*前回の臨時国会冒頭で解散し、疑惑追及を恐れて国会審議をまったくやらなかったのがよい例です。
2.あまり審議から逃げると、国民から「疑惑隠しだ」とか「国会できちんと議論せよ」といった批判を受けるので、最低限の審議をやらざるを得ない。
3.政府としてどうしても通したい法案や予算案がある時には、国会を開かざるを得ない。しかも、法案審議の時間が十分に確保できない場合は、「審議未了廃案」といって法案が成立しない可能性がある。したがって、ある程度の審議日程の幅が必要。
つまり「疑惑を追及されたくないから国会を開きたくない一方で、法案や予算案は通したいから、国会をある程度の期間は開かざるを得ない」という矛盾した2つのベクトルのもとで、政府与党も頭を抱えるわけです。もちろん心ある与党議員の中には、森友・加計学園疑惑もふくめて国会で十分な審議をすべき、と発言する人もいます。
野党側の事情
1.野党には予算編成権はない(修正提案はできる)。法案を議員立法で提出することはできるが、与党が相手にしない限り成立の可能性はない。
2.したがって、野党のもっとも重要な役割は、行政の監視である。安倍政権の行き過ぎや政治の私物化、役所の不正などを見つけ出し、追及していくことが、野党議員の重要な仕事になる。そのためには、衆議院の予算委員会や各委員会での質疑に十分な時間を確保することは死活的に重要である。
以上のような背景のもとで、審議日程(特に会期末)をめぐって与党と野党でかけ引きが行われます。それを担当するのが、与野党の国会対策委員長(国対委員長)や私のような国対委員長代理です。
立憲民主党は野党第一党(野党筆頭)になったために、政党間交渉において2つの役割が期待されます。一つ目の役割は、野党全体の声をとりまとめることです。他の野党の国対委員長や議院運営委員会理事会メンバーと連絡を取り合い、ときには「野党国対委員長会談」を開催して、野党の意見をとりまとめます。慣例により野党第一党の国対委員長代理は、国対委員長会談に陪席(ばいせき)して実務を担います。
二つ目の役割は、野党を代表して、与党の国対と調整することです。与党(自民党と公明党)の意見を集約して代表するのは、自民党の国会対策委員長です。自民党と国対委員長と立憲民主党の辻元清美国対委員長が二者で会談することも多いのですが、その場には双方の国対委員長代理も陪席します。細かい点の実務的なフォローアップは、両党の国対委員長代理(=私)の仕事です。
ちなみに、与野党国対委員長会談の冒頭は、テレビ取材(業界用語で「頭撮り」と呼びます)され、ニュースで時々流れます。自民党の国対委員長と国対委員長代理に向かい合って、辻元国対委員長と私が座っているニュース映像をご覧になった方も多いと思います。遠慮深そうにソファーに慎ましく座っている地味な男性が、わたくし 山内康一です。
今国会は11月1日開会、12月9日閉会ということで、与野党で合意しました。野党としては「1か月以上の審議日程を確保し、首相の代表質問、衆議院の予算委員会、各委員会での質疑」を要求してきましたが、与党側がおおむね了解した結果です。
この「会期末決め」のために辻元さんと私は先週から平日は朝から晩まで根回しや打ち合わせのために国会内と議員会館内を歩き回りました。スマホについている万歩計によれば、昨日と一昨日、3日前の歩数と歩行距離は次の通りでした。
10月30日(月) 12,688歩 (8.1㎞)
10月31日(火) 14,406歩 (8.7㎞)
11月 1日(火) 17,383歩 (10.8㎞)
これだけ歩いて、いろんな人の意見を聴いて、いろんな人と調整して、その合間には委員会の配属を決めたり、党の会議を用意したりと、昼ごはんを食べる時間もないような状態でした。月曜日は昼飯抜き、火曜日は15時に辻元さんと国会内のソバ屋、昨日は会議の合間に国会内のソバ屋という感じです。いつも頼むのは「冷やし野菜炒めソバ」というメニューです。
国会の会期が決まり、ちょっとだけ落ち着きました。しかし、議員会館の事務所は備品もそろっていなくて、がらーんとしています。地元の選挙後の後始末も終わっていません。お世話になった皆さんへのあいさつ回りも終わっていません。まだまだ忙しい日々が続きます。