前原代表の新体制が発足します。前原さんは代表選の公約の中心に「All for All」という標語を掲げていました。駅で配るチラシでそれについて書いてみました。ご一読いただければ、さいわいです。
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All for ALL:みんなでみんなを支える社会へ
現在、老後に不安を感じる人の割合は85%です(内閣府調査)。また、世帯収入300万円以下の家庭は34%です(厚労省調査)。世帯収入は1997年をピークに20年も減少し続けています。ほとんどの国民が、病気、事故、災害、失業、老後の暮らしなどに不安を感じています。いまの日本は「自己責任社会」です。公的セーフティネットが弱くなり、いざという時に貯蓄がないと不安です。しかし、貯蓄ゼロの世帯がいまや3割を超えます。兄弟が多くて大家族という時代なら、家族の助け合いで困難を乗り越えられたかもしれません。しかし、少子化で兄弟も減り、ひとり親世帯や単身世帯が増えて「家庭内福祉」が機能しにくくなっています。終身雇用の正社員が多数派だった時代は、会社が従業員の暮らしを守ってくれました。しかし、非正規雇用が増え、転職が当たり前の時代には「企業内福祉」に頼れない人が多数派です。
将来に不安を感じない人が少数派という現状です。しかし、自然とこうなったわけではありません。歴代自民党政権が「小さな政府」のかけ声のもと、所得の再分配機能を弱め、社会保障や教育への財政支出を減らしてきたためにセーフティネットが弱くなり、将来不安が高まりました。日本は先進国でもっとも家庭の教育費負担が重く、政府の教育支出が少ない国です。政府が教育費をケチるから、家庭が教育費の負担に苦しんでいます。まさに「自己責任」です。親の所得格差が、そのまま子どもの教育格差に直結します。教育費負担の重さが少子化の一因です。
老後に不安を感じる85%の人は、医療費や介護費の自己負担を考えて、貯金をとりくずせません。将来不安に備えて貯金に手をつけず、消費にお金を回せません。家計の金融資産は1800兆円を超えますが、その多くは高齢者の金融資産です。高齢者の将来不安が解消し、たとえば1800兆円のわずか1%の18兆円が消費に回るだけでも、GDPの3%超の需要増につながります。
将来の不安を解消する「みんなでみんなを支える社会」へ
前原誠司代表は「All for All(みんなでみんなを支える社会)」をめざしています。だれでも病気や事故、災害などに遭い、人生のどこかのタイミングで弱者になることがあります。民進党は、「自己責任」で個人がリスクに備えなくてはいけない不安な社会ではなく、社会全体でリスクに備える安心社会をつくります。
その際に現金を配る(現金給付)よりも、教育、保育、介護、医療、障がい者支援などの実際のサービス(現物給付)を中心にした方が、より直接的に安心につながります。病気の時の医療費の自己負担が少なくなれば、不安材料がひとつ減ります。教育や保育のサービスが無償化(低料金化)されれば、子育て費用の負担が減り、子どもの貧困削減にも役立ちます。医療費や介護費の自己負担が減れば、高齢者は貯蓄を消費にまわせます。現物給付サービスは、対人サービスなので雇用創出にも有効です。医療や介護、子育て支援などの現物給付サービスは、地域的な偏在もなく、都市でも農村でも必要とされ、すべての人の安心に貢献します。
他方、サービスの充実には、財源が必要です。増税は人気がありませんが、それでも「みんなでみんなを支える社会」をつくるには増税が不可欠です。ムダ削減や経済成長による税収自然増だけでは財源を確保できません。増税にも「良い増税」と「悪い増税」があります。将来不安を取りのぞき、安定した社会保障制度をつくる増税は「良い増税」だと思います。他方、借金返済のためだけの増税は「悪い増税」だと思います。国の借金は問題ですが、目先の財政再建を優先して、教育や子育て支援をおろそかにしたり、老後の不安をかかえる高齢者の負担を増やすのは誤りです。財政は国民生活を支えるためのものであり、国民生活を犠牲にしてまで財政を再建するのは本末転倒です。財政悪化を理由に子どもの貧困や高齢者の不安を放置してよいはずがありません。「良い増税」で子どもの貧困や老後の不安を解消すべきです。
また、現物給付サービスの充実は、低所得者ほどメリットが大きく、格差縮小に役立ちます。高所得者にとってもいざという時にサービスを受けられる安心感があります。高所得者でも親の介護や障害のある家族のケアで大変な思いをしている方はいます。前原新代表のもとで民進党は、所得で人を差別することなく、だれもが将来不安を感じることのない社会、「みんなでみんなを支える社会」をめざします。