アベノミクスに代わる「尊厳ある生活保障」

最近駅で配っているチラシの内容を転載します。ご一読いただければさいわいです。

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アベノミクスに代わる「尊厳ある生活保障」

共謀罪の導入、加計学園問題など、安倍政権もほころびが目立つようになってきました。民進党は単に政府を批判するだけではなく、前原誠司氏を中心に「尊厳ある生活保障総合調査会」を設け、アベノミクスへの対案として「尊厳ある生活保障」という政策パッケージを用意しています。しかし、「尊厳ある生活保障」と言われても、何のことかすぐわかる人はいません(私もわかりませんでした)。この新しいコンセプトの「尊厳ある生活保障」についてご説明させていただきます。

 
1.自民党政権の「自己責任」の社会保障観【現状】

安倍政権・自民党は、自助努力や家族内の相互扶助を尊び、自己責任を重視します。新自由主義的で市場重視の「小さな政府」をめざし、公的サービス(介護や医療、子育て支援等)への支出を嫌います。財源に困ると、増税するよりも、社会保障費の削減を優先します。個人が自己責任でリスクに備えることを当然視し、社会的セーフティーネットを軽視します。

また、自民党は伝統的に「家族重視」です。夫は終身雇用の正社員、専業主婦の妻が高齢者の介護や子育てに専従する「標準世帯」の家族を前提に考えます。しかし、「標準世帯」から外れる世帯、つまり母子家庭やひとり暮らしの人には不利な社会モデルです。

経済成長を最優先するのも安倍政権の特徴です。経済成長を前提として、まず大企業や富裕層が豊かになれば、そのおこぼれが中小企業や貧困層に「したたり落ち(トリクルダウン)」、国全体が豊かになるという発想です。しかし、富裕層がより豊かになっても、低所得層は増える一方で、格差の拡大が目立っています。今や経済学者の多くがトリクルダウンを否定しています。
 

2.民進党がめざす社会モデル:みんなでみんなを支える社会

民進党は、社会全体でリスクを共有し、みんなでみんなを支える社会をめざします。家族内で助け合いたくても、母子家庭や障がい者のいる家庭では自助努力にも限度があります。また、事故や病気、大震災等をきっかけに、だれでも支援される側になる可能性があります。生活者の将来不安の解消を重視し、尊厳ある生活を保障することが大切です。失業や老後の所得保障など人生のさまざまなリスクを個人や家庭だけで抱え込まず、社会全体で支えあうモデルをめざします。「自己責任」のひと言で弱者を切り捨てる政治からの脱却をめざします。支援を受ける人も、自己責任や自助努力で生活できないからと後ろめたい気持ちになる必要はなく、尊厳を失うことなく公的サービスを受けられる仕組みをめざします。

 

3.尊厳ある生活保障へ

尊厳ある生活保障モデルは、教育、医療、保育、介護といった現物給付サービスを重視します。あらゆる人が必要とするこれらのサービスは、無償ないしは低価格で提供されるべきです。所得に関係なくすべての人が受益者になると同時に、広く負担を共有する社会をめざします。その際に「すべての人が受益する」という点がポイントです。特定の「弱者」を支援対象にすると、対象から外れた人が不満に感じます。高所得者にとっても、自分が受益しない公的サービスは負担したくないと思うのが人情です。「弱者救済」を掲げると中高所得層の支持を得にくくなります。「すべての人が負担し、すべての人が受益する」かたちの公的サービスであれば、広範な支持を得られます。北欧諸国では、低所得層も含めて広く負担を共有し、すべての人が質の高い公的サービスを受けられます。北欧の社会保障モデルから学ぶ点が多いと思います。

社会的セーフティーネットを充実させ、安心できる社会を築くためには、財源論を避けては通れません。新自由主義的な税制改革が20年以上も続き、企業の法人税や高所得者の所得税が下げられてきました。富裕層の所得税率が下がる一方で、中間層や低所得層の負担を増やす消費税等の増税が続いてきました。いわば「税の不公平化」が進み、税収が減った上に、所得の再分配機能は極端に弱くなりました。現在の格差拡大の一因は「税の不公平化」です。

かつて言われた「ムダ削減で財源確保」や「経済成長で税収自然増」というのは、現実には不可能でした。所得税の累進性を強化し、大企業にも応分の負担を求め、相続税や資産課税の強化を通じた税収確保を考えなくてはいけません。昔から「増税を訴えたら選挙に負ける」と言われますが、これ以上負担を将来世代に先送りするわけにはいきません。福祉や教育・子育てを充実させるための増税は避けられません。増税から逃げて「小さな政府」路線を続ければ、ますます社会保障や教育支出はカットされ、将来不安が高まります。増税とセットで公的サービスを充実させ、介護や医療等の家計負担を減らせば、多くの人にとって「税負担は増えても、医療や介護、教育の家計負担が減るので、トータルで考えると得をする」という制度になります。それによって将来不安を解消し「尊厳ある生活保障」を実現できます。