政治学者の杉田敦氏の「政治的思考」(岩波新書)という本に「ポピュリズム」に関するわかりやすい説明がありました。
問題を自分たちの外部にある何かのせいにしようとする傾向が強まっています。これは、問題は自分たちとは関係なく、外部からやってくるという発想にもとづくものです。誰か悪い人たちが自分たちに迷惑をかけている。彼らを攻撃しさえすればよくなるという考え方です。そして、これは現在、ポピュリズム現象という形で出てきています。
この本は4年前に書かれたものですが、いまのトランプ現象を描写しているようです。イスラム教徒やメキシコ人移民を攻撃し、真の問題から目をそむけさせるのが、トランプ大統領の手法だと思います。
ポピュリズムを批判するのは難しい。へたをすると、民主政治そのものを批判することになってしまうからです。民主政治は多数派の意見に従うものです。その多数派の意見が愚かだとしてそれを批判すると、民主政治そのものを批判することになってしまう。多数派よりも正しい少数派に従えというのでは、民主政治とはいえません。しかし、かといって、民主政治なら何でもいいということにはならないでしょう。ゆがんだ民主政治は批判されなければなりません。
私もポピュリズム批判の難しさについて考えてきました。ポピュリズムを批判すると高慢な印象を与えます。ポピュリズムを批判すれば、「リベラルなインテリはわかってない」といった非難を浴びます。ポピュリズム批判は、多数派の批判と受け取られがちです。「自分だけが正しい」という態度だと見なされれば、独善的との批判を受けます。
杉田教授の示した解決策は次の通りです。
民主政治への批判にならないように、ポピュリズムを批判することは可能でしょうか。それはポピュリズムの定義によります。私は、ポピュリズムとは、多数派にとって不都合な問題をすべて外部に原因があるとすることで、真の問題解決を避ける政治であると定義したいと思います。
もう一度引用します。
ポピュリズムとは、多数派にとって不都合な問題をすべて外部に原因があるとすることで、真の問題解決を避ける政治である。
これはなかなかの定義だと思います。その例として欧州の移民排斥を挙げています。欧州の移民は低賃金労働に従事して社会に貢献していますが、悪者にされがちです。フランスやオランダで今まさに起きている現象です。
日本でも在日外国人へのヘイト、嫌韓や反中といった排外的ナショナリズムがポピュリズムと言えるでしょう。外部に敵をつくるのは簡単です。知恵も工夫もいりません。そういうポピュリズム政治に対抗するのも、民進党の役割だと思います。
ポピュリズム政治の代表選手のトランプ大統領に媚びるばかりの安倍総理は、排外的ポピュリズムを教え込む小学校に肩入れしているようです。安倍総理の夫人がその小学校の名誉校長に就任する予定だったようですが、総理夫人の肩書の影響力を考えれば、軽率だと思います。トランプ大統領と安倍総理のコンビは、排外的ポピュリストという点でも相性が良いのかもしれません。ポピュリズム政治からの脱却こそ、政治の重要なテーマだと思います。