朝に駅頭でビラを配っておりますが、たとえば次のような内容です。ご参考までに年明け配布予定のビラの内容を転記させていただきます。長いですが、ご一読いただければさいわいです。
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安倍政権4年の外交・安全保障をふり返る
日ロ交渉の「失敗の本質」
昨年12月の日ロ首脳会談は失敗でした。北方領土の帰属は置き去りのまま、3000億円の経済協力を約束しました。プーチン大統領が柔道を見物したり秋田犬の頭をなでたりという、無価値なニュースで歓迎ムードが演出されましたが、日本にとって成果はゼロというより、むしろマイナスでした。
領土交渉が難しいのは理解できるので、領土問題に進展がなかったのは批判しません。しかし、あのタイミングでプーチン大統領を大歓迎して経済協力を約束したのは問題です。国際社会がシリアのアサド政権による市民虐殺を強く批判するなかで、ロシア軍は反政府勢力を空爆してアサド政権を支えています。また、ロシアは、国際法に反してウクライナのクリミア半島を併合し、日本を含め先進諸国はロシアに経済制裁を行っています。今回の日本の経済協力はいわば「制裁破り」であり、先進諸国が日本を見る目は厳しいです。
安倍首相は「積極的平和主義」といいますが、シリアでのロシア軍の空爆、武力を背景としたクリミア併合は見て見ぬふりです。国際社会の法と秩序を破壊してきたプーチン大統領を「ウラジーミル」とファーストネームで呼び、親密さをアピールしています。安倍外交には、平和や人権の観点が欠落しています。真珠湾で平和を誓うだけで、現在進行中のシリアや南スーダンの内戦や虐殺を止める努力はしていません。
安倍政権で進む「軍事化」の歩み
安倍政権の安全保障政策のなかで集団的自衛権は注目されました。しかし、他にも静かに粛々と「軍事化」が進んでいます。国会で審議されることなく、閣議決定や政省令で進む「軍事化」は、あまり目立ちません。さほど報道されることなく、見過ごされている「軍事化」の動きを整理してみました。
1.武器輸出の解禁と積極的売り込み
かつての自民党政権は武器輸出に慎重でしたが、安倍政権は積極的です。2014年 4月に閣議決定で武器輸出三原則を見直し、武器輸出を解禁しました。官民をあげてオーストラリアへの潜水艦売り込みに奔走しました(結果は落札できずに失敗)。政府は武器輸出を後押しし、防衛関連企業の武器見本市への参加を促すとともに、財政投融資や貿易保険による武器輸出支援を検討しています。
安倍政権は、武器輸出により外交的影響力の拡大をめざしています。同時に、武器輸出はアベノミクスの隠れた柱のひとつです。日本が「死の商人」になれば、「平和国家」のイメージが傷つきます。さらにメード・イン・ジャパンの武器が民間人虐殺に使われた場合には道義的責任を問われます。
2.大学における軍事研究の解禁
2013年12月閣議決定の「国家安全保障戦略」は、防衛省と大学の共同研究の解禁へ舵を切りました。大学向けの「安全保障技術研究推進制度」が始まり、大学の研究資金の不足を防衛省の研究費で補う流れができました。大学における軍事研究に反対する学者も多い一方で、「日本学術会議」は軍事研究解禁を検討しています。日本学術会議は1950年に「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」とする声明を出しました。しかし、科学者が戦争遂行に協力した反省から導かれた教訓が、失われつつあります。
3.海上自衛隊機のフィリピン海軍への貸与
2016年 5月に海上自衛隊機(TC90)をフィリピン海軍へ貸与することで合意しました。これは「戦後初の軍事援助」といえます。海上自衛隊機は海洋の警戒監視に使用され、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンを支援し、中国をけん制する狙いといわれます。日本はパイロットと整備士の訓練も行います。
他国の軍隊に航空機を与えて、パイロットや整備士を訓練すれば、まぎれもない「軍事援助」です。練習機とはいえ、警戒・監視に使うのなら軍用機と見なされます。中国側から見れば、「日本海軍がフィリピン海軍に軍事援助して、中国の南シナ海進出を妨害しようとしている」と受け取られます。
例えば、フィリピンの大統領が人気取りのために過激な言動をとり、中国との武力衝突が起きる可能性がないとは言い切れません。貸与した海上自衛隊機が南沙諸島(スプラトリー諸島)で中国軍に撃墜されるといった事態になれば、中国とフィリピンの二国間の紛争に日本が巻き込まれる可能性が出てきます。フィリピン海軍への軍事援助は、不必要で余計なリスクを増やすだけです。
4.南スーダンの自衛隊PKO部隊に「駆けつけ警護」任務
2016年11月、南スーダンに派遣されるPKO部隊に「駆けつけ警護」任務を付与する閣議決定がなされました。南スーダンでは内戦が続き、安倍総理は「戦闘行為ではない」といいますが、自衛隊員が危険にさらされています。「駆けつけ警護」を行えば、紛争の当事者になりかねません。国連職員やNGO職員を守る「駆けつけ警護」という建前ですが、日本のNGOの多くは自衛隊の「駆けつけ警護」に反対です。
国連安全保障理事会の南スーダン制裁決議に日本は後ろ向きです。現地に自衛隊を派遣している日本政府は、南スーダン政府の反発を恐れ、制裁に及び腰です。米国主導で武器禁輸を行おうというときに、日本が足を引っ張っています。つまり、①平和維持のために自衛隊をPKO部隊として派遣した結果、②南スーダン政府にPKO部隊を人質にとられたような形になり、③国連安保理の武器禁輸に賛成しにくい、という構図です。国連の武器禁輸の足を引っ張るくらいなら、自衛隊を呼び戻した方がよいと思います。
5.安倍政権の「軍事化」路線から「脱軍事化・平和外交」路線へ
安倍政権下で「軍事化」が進んでいます。経済成長にともない台頭する中国の軍拡に対抗し、日本も同じペースで軍拡を進めれば、「安全保障のジレンマ」と呼ばれる状況に陥り、安全保障環境は悪化します。また、財政赤字が肥大化するなかで防衛費を増やせば、社会保障費等にしわ寄せがいきます。
勇ましく毅然とした「軍事化」路線は、一見かっこいいかもしれませんが、平和には逆効果になりかねません。専守防衛に徹した防衛力と日米安保は維持しつつも、近隣のアジア諸国との冷静な対話を進め、自衛隊の海外派遣には慎重になるべきです。同時に日本は、人権や民主主義、法の支配といった普遍的価値を尊重し、世界の先進民主主義国と協調しながら、人道援助等の平和的手段で国際社会に貢献すべきです。