税金のことを勉強していたら、100年ほど前の租税収入のデータがありました。1913年(大正2年)の租税収入の割合は以下の通りです。
【1913年の税収の割合】
・所得税 7.6%
・相続税 0.7%
・鉱業税 0.6%
・酒税 19.9%
・砂糖消費税 4.5%
・織物消費税 4.3%
・取引所税 0.7%
・醤油税 1.0%
・石油消費税 0.4%
・通行税 1.0%
・地租 15.9%
・営業税 5.8%
・関税 15.7%
・屯税 0.2%
・印紙収入 6.5%
・専売益金 14.8%
*出典:神野直彦「税金 常識のウソ」文春新書 2013年
酒税が全体の2割を占めるのに驚きます。砂糖消費税、醤油税といった各種の消費税が意外と多いです。塩やタバコの専売もよい収入源だったこともわかります。
砂糖、塩、醤油といった調味料が重要な税源というのは、現代人の感覚では理解しにくいですね。100年前の大蔵省の感覚だと、ソース税とか、マヨネーズ税とか、ケチャップ税とかも課税する必要があるかもしれません。
貿易自由化が進んだ今では、関税収入は少なくなりました。当時の関税が15.7%というのも驚きです。明治時代に関税自主権回復が重要な外交課題だったのが、よくわかります。
法人税や所得税が少ないのが途上国の税収の特色ですが、戦前の日本も典型的な途上国型の租税収入構成になっています。
今度は平成28年度予算の租税収入(国税)の主なものを挙げてみます。こちらはデータの都合上、パーセント表示ではなくて、兆円単位です。
2016年度の税収(単位:兆円)
・所得税 18.0兆円
・法人税 12.2兆円
・相続税 1.9兆円
・酒税 1.4兆円
・タバコ税 0.9兆円
・消費税 17.2兆円
・揮発油税 2.4兆円
・石油石炭税 0.7兆円
・関税 1.1兆円
・印紙収入 1.0兆円
(総額) 57.6兆円 *合計ではありません。
百年ほど前と比べて、酒税や関税が激減し、法人税や消費税が大幅に増加しています。
これから教育や子育て、医療や介護、年金といった公的サービスを充実させるためには、税収増が必要です。所得税は累進性をアップし、資産課税も強化し、富裕層には今まで以上にご負担いただく必要があると思います。また、これ以上の法人税の減税は必要ないと思います。大企業には応分の負担をしてもらう必要があるでしょう。
これから増やすべきは、環境税(環境税としての機能を果たす石油石炭税や揮発油税も含む)だと思います。化石燃料の使用を抑制して、環境への負荷を減らしつつ、税収増につながります。寒い地方では燃料代がかさみ、地方のクルマ社会ではガソリン代の値上げは打撃ですが、激変緩和措置をとりつつも、人類全体の利益を考えて化石燃料の使用を減らさざるを得ません。
いわゆる「バッド(bad)課税」の原則にたち、タバコ税や酒税は増税もやむを得ないと思います。私もお酒は好きですが、特に度数の高いお酒への課税強化はやむを得ないと思います。ビールの税額が高すぎるのは、再考の余地があるでしょう。
さて、100年後の租税収入の柱は何かといえば、おそらく環境税と資産課税だと思います。消費は悪ではないので、消費税は本来よくない税です。働いて所得を得るのも悪ではないので、所得税も本来よくない税です。しかし、環境に負荷をかけるのは悪であり、課税すべきです。また、格差の固定化を防ぐには、資産課税が重要です。
100年後は生きていないだろうから、無責任に100年後の税制を予言し、「100年後は環境税と資産課税が税制の柱になり、消費税や所得税は影が薄くなる」と断言しておきます。