私は基本的にカジノ法案に反対です。例外的に認めるとすれば、沖縄や北海道といった地方の農村部や離島などの交通の便が悪い場所に、地域振興のためにつくる程度なら認めてもよいかもしれません。しかし、首都圏や関西圏などの大都市近くにカジノをつくれば、ギャンブル依存症の人が増えるのは必然です。やめた方がよいと思います。
厚生労働省の調査によれば、病的賭博の推定有病率は次の通りだそうです。
・成人男性: 9.6%
・成人女性: 1.6%
先進国平均が1.5~2.5%とされています。男女平均で5%超はかなり多い部類に入ります。特に男性のギャンブル依存症の有病率の高さは問題です。
日本のギャンブル依存症の8割はパチンコといわれています。異常に高いギャンブル依存症の背景には、駅前や幹線道路沿いなど至る所にパチンコ店があるという、日本特有の事情があると思います。こんなに気軽に身近でギャンブルできる国は他にないです。
パチンコ屋の近くには、サラ金のATMが多いように、借金してまでパチンコにお金を費やす人が多いです。そのために自己破産したり、自殺したりする人も多いです。ギャンブル依存の社会的コストを考えれば、安易にカジノを解禁するのは危険です。
カジノで有名なモナコ公国は独立国ですが、国内で自国民がギャンブルすることを禁じています。ギャンブル依存症から国民を守るための措置です。モナコ公国は、カジノの問題を熟知して国民を守りつつ、賢く外貨を獲得しています。ときどきやって来る外国人旅行者がギャンブルするのは構わないのですが、地元の人がギャンブル依存症になりやすい点が問題です。
地元の人が「気楽にカジノに行けない工夫」が必要だと思います。パチンコの最大の問題は、身近にあることです。遠くにあって年に数回行くだけなら問題ないですが、気軽に行けるのが、依存症の原因のひとつです。気軽に行きにくくするために「カジノ入場税」を外国人には安く、日本人には高めに設定するといったことも考えられます。
また、アメリカには「ギャンブルの自主禁止」という制度があるそうです。一部の州で法制化されているそうです。ギャンブル中毒におちいってしまった人が、自己申告に基づいて、カジノへの出入りや賞金の受け取りができない「禁止者リスト」に、自分の名前を登録する制度だそうです。アメリカの一部の州で導入されている法律です。意思が弱くて自分ではギャンブル中毒を克服できない人が、この「ギャンブルの自主禁止」を利用するそうです。ギャンブル中毒から抜け出そうという本人の意思をサポートする意味で、こういった法律や制度は有効だと思います。日本でも参考になると思います。
いろんな問題があるカジノ法案は、あんなに短時間の審議で国会を通過させてはいけなかったはずです。仮にカジノを解禁するにしても、十分なギャンブル依存症対策を施すことを確認した上で法案を可決すべきだったと思います。安倍政権の強引な国会運営は、将来に禍根を残します。
*ご参考:リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン「実践行動経済学」、日経BP社、2009年